生産性の意味とその重要性

生産性は重要なトピックとして、世界各地でロックダウンが行われる前から注目を集めていましたが、今やビジネスにとって不可欠な要素になっています。生産性の意味とその測定方法、パンデミック後の時代に生産性を高める方法についてご紹介します。

生産性 | 所要時間: 11分
productivity during the pandemic - Workplace from Meta
パンデミック時の生産性

パンデミック時の生産性

実は、コロナ禍によって多くの人がリモートワークを始めた際には、興味深い現象が起きていました。アウトプットが上昇したのです。ヨーロッパの経営幹部と管理職を対象とした調査では、在宅勤務によって生産性が向上したという回答が43%を占め、生産性が低下したという回答は29%だけでした。一方で米国では、労働時間が減少し失業が発生したにもかかわらず、生産性の伸び率が7.3%と急激な増加を示し、2009年以後で最も大幅な増加となりました。

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オフィス勤務再開の周知からハイブリッドワークの導入まで、Workplaceは業務を簡素化します。

おそらく、リモートワークによる生産性の向上はそれほど予想外ではなかったでしょう。理屈で言えば、在宅勤務では通勤など仕事以外のことに割く時間が少なくなるため、生産性が高まるはずです。2012年に行われた調査では、中国のオンライン旅行会社で社員に週4日の在宅勤務を許可したところ、生産性が13%上昇したことが明らかになりました。アウトプットが上昇した原因としては、集中しやすい環境で作業ができることと、単に勤務時間が増えたことが挙げられていました。

コロナ禍を経てもオフィス勤務が一斉に復活していないのは、在宅勤務では生産性が向上するのが一因だと考えられます。生産性が低くなるのに、「普通」の働き方に戻る必要があるでしょうか。ただし実際には、物理的なオフィスを撤廃して在宅勤務に完全移行する企業もある一方で、多くの企業ではハイブリッドワークがこれからの働き方のスタイルになりそうです。パンデミック前にリモートワークを行っていた社員の割合は全体の30%でしたが、今後は48%の社員が少なくとも部分的にリモートワークを取り入れると予測されています。つまり、多くの場合、完全なオフィス勤務には戻らないにしても、職場への復帰がゆるやかに進むということです。

それでは、生産性のほうはどうなるのでしょうか。どうすれば、リモートワーク期間中に達成できた成果を維持できるのでしょうか。また、こうした成果とリモートワーク期間中に見られた他の改善点との間にはどのような関係があるのでしょうか。経営者によると、90%が企業文化の強化を、84%が社員のエンゲージメントの活性化を、83%が従業員体験の向上を挙げています。

高い生産性と従業員体験の向上を維持したいとします。その場合は、生産性が上がった理由と、これら2つの要素がどのように影響し合うかに目を向けると参考になるでしょう。リモートワークでは、仕事に集中しやすくなり、ワークライフバランスも向上します。また、柔軟な働き方ができ、作業環境も管理しやすくなります。企業は、社員が職場に戻る際、こうした条件を維持する方法を模索し、さらに快適な職場環境を作り出すための目標を設定する必要があります。

まずは、生産性の意味とそのしくみを十分に理解することから始めましょう。

生産性の意味

生産性の意味

OECDは、生産性を「アウトプット量とインプット量の比率」と定義しています。具体的に見てみましょう。インプットとは生産するために使用したすべてのものを指し、設備、時間、資本、労働力、土地などが該当します。一方、アウトプットとは生産されたもののことで、例としては、自動車や、土地で栽培されたトウモロコシの収穫量などがあります。

製造業や農業の生産性はこのように比較的考えやすいのですが、サービス部門の生産性を考えるとそう簡単には済みません。法律事務所、医療機関、保険会社などでは、インプットとアプトプットの種類が非常に多岐にわたるからです。こうした組織におけるインプットとアウトプットの定義や生産性の意味を説明するのは難しい場合があります。

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生産性の計算方法

生産性の計算方法

生産性については、考慮すべきインプットとアウトプットが数多くあるため、測定方法が複雑になります。基本的な計算方法では、アウトプットをインプットで割った値で生産性を示します。

例えば、3,000台の車を100人の従業員で製造した場合、生産性の計算式は以下のようになります。

車3,000台 ÷ 従業員100人 = 1日に1人あたり車30台

ところがサービス部門では、定量的要素に注目した場合、正確な生産性を測定できない可能性があります。例えば、店舗で販売担当者が対応した顧客数に基づいて生産性を測定するとします。このときの顧客体験はどうだったのでしょうか。何かを購入したのか、再び来店する可能性はあるのか、他の人にこの店をすすめるかについてはどうでしょうか。

生産性を測定するための方法が他にもあるのは、一つにはこうした点にも考慮が必要だからです。企業によっては、各従業員が生み出した収益をその従業員の給与で割り算する場合もあります。従業員のパフォーマンス目標を設定し、これを基準にして生産性を測定する場合もあります。また、提供されたサービスに対する顧客や患者の体験と満足度という観点から生産性を測定する方法もあります。

Xiofeng Li氏とDavid Prescott氏は、サービス部門における生産性の測定に関するレポートの中で、「サービス部門では通常、提供されたサービスの品質で顧客は評価するので、品質が非常に重要な要素になる」と指摘しています。

こうした考え方が、新しい計算方法の開発につながっています。

生産性が重要な理由

生産性が重要な理由

どのように測定するにせよ、経済学者や経営者が生産性という概念に注目するのはなぜなのでしょうか。これには多くのもっともな理由があります。そのうちのいくつかをご紹介します。

効率性

生産性は効率性と同じものではありませんが、両者は表裏一体の関係にあり、生産性が生産効率の指標として用いられることがあります。

人間の活動が環境に与える影響を低減する必要に迫られている今、企業は資源を効率的に活用して廃棄物をできるだけ削減しなければなりません。さらに、コロナ禍の影響で経済状況が変化する中でオフィス勤務が再開されると、少ない投入資源で多くの成果を出すよう期待される可能性があります。そのためには、インプットに見合った最大限のアウトプットを得る必要があります。

生活水準

生産性が上昇すると、企業側だけでなくすべての人に良い結果がもたらされます。企業の利益が増えることで賃金の向上につながります。資源を効率的に活用してコストを削減することで商品の価格を下げられるので、消費者のメリットにもなります。また、需要が増えることで雇用が増えるため、経済が活性化して競争力が強化されます。Deloitteのレポート「UK Productivity Puzzle (英国の生産性に関する難題)」には、「生活水準を向上させるうえで生産性がいかに重要であるかについては、いくら誇張してもしすぎることはない」という記述があります1。逆に言えば、生産性が低下すると賃金が下がり、条件の良い仕事も少なくなります。

収益性

ビジネスにおいて、生産性の向上は収益性の向上を意味します。組織がその結果を賃金の向上と雇用機会の大幅な拡大につなげることができれば、関係者全員のメリットになります。企業は獲得した利益を再投資することで自社の成長を実現し、さらなるビジネスチャンスを生み出すことができます。

社員の心身の健康

生産性と心身の健康は、好循環を生み出します。少なすぎる時間で多すぎる仕事を抱えるとストレスを感じ、仕事に疲れ切ってエンゲージメントが低くなります。生産性を高めることができるよう社員をサポートすれば、ワークライフバランスが向上するため、キャリアアップに取り組む余裕を持てるようになります。社員の心身の健康を実現するための対策を行うことは、ビジネスの経営者としての目標達成につながります。これは、社員が健康な状態で充足感をもって仕事に打ち込めば、生産性が向上する可能性が高くなるためです。

モチベーションの向上

生産的に時間を使っていると分かっていれば、気分良く仕事をできるものです。こうした快適さの要素は組織全体に広がり、社員のモチベーションを高めてアブセンティーイズムを減少させ、協力と成長を促します。モチベーションの向上は生産性の上昇につながる一方、作業を完了するための十分な時間を与えないなど、生産性向上のための取り組みにおいて社員の心身の健康を考慮しないと、モチベーションが下がり生産性も低くなります。

社員のエンゲージメント

生産性は社員のエンゲージメントと密接な関係があります。社員のエンゲージメントが低下していると生産性が低下して、巨額の損失につながります。一方、Gallupのレポート「「State of the Global Workplace (世界各国の職場状況)」では、職場におけるエンゲージメントが高い企業は、エンゲージメントが低い企業と比較して収益性が21%高く、生産性も17%高いことが指摘されています。また、エンゲージメントが高い企業では社員の定着率が高く、アブセンティーイズムが少ないほか、顧客エンゲージメントが高く、事故の発生が少なく、社員の健康状態が良好なことがわかっています。これらの事実は、生産性と従業員体験(EX)との強い関係を示していると考えられます。

顧客満足度

生産性の影響を受けるのは、従業員だけではありません。問い合わせに対する迅速な回答やすみやかな対応など、時間をより生産的に使うことで、顧客満足度も高くなります。しかし、純粋に定量的な方法で生産性を測定すると、顧客満足度が必ずしも考慮されるわけではありません。すみやかな対応を行ったとしても、優れた対応になるとは限りません。生産性の測定においてサービスの品質を考慮する必要があるのは、こうした理由からです。

生産性が低下する原因

生産性が低下する原因

2019年に行われた調査では、仕事で常に高い生産性を維持していると回答した英国の労働者は全体のわずか4分の1でした。多くの国で生産性の低迷が見られる現状では、この状況がかなり広範に及んでいると推測してもよいでしょう。では、生産性が低下する原因は何なのでしょうか。もちろん、このような複雑な問題について単純な答えはありません。

アブセンティーイズムとプレゼンティーイズム

特に重大な問題の一つに、社員のウェルネスがあります。厳密には、ウェルネスの欠如と言うべきでしょう。高いレベルでウェルネスを維持すると生産性にプラスの影響を及ぼすことができますが、逆も言えます。病気による欠勤は、生産性に多大な影響を及ぼします。病気関連で生産性が低下したことによる損失は、年間5,300億ドルにも達するという推計が出ています。簡単なことで、社員が働いていなかったり、病気でパフォーマンスに悪影響があれば、生産性は低下するのです。このため、生産性を高めたいのであれば、病気による欠勤に注目して、その理由が仕事に関係しているかを確認したうえで対処方法を検討する必要があります。

病気による欠勤はかなり高い確率で生産性に関する問題を示しますが、その反対のプレゼンティーイズムもそれと同様です。常に規定の勤務時間を超えて就業している社員がいる場合、組織の生産性に問題があり、社員の仕事ぶりが期待を下回っている可能性があります。

「背もたれの上着」症候群とも言えるこの現象には、いくつかの原因が考えられます。まず、残業を当然のものとして推奨する企業文化がある場合は、定時で帰宅しにくくなります。この場合、通常の勤務時間中に仕事に集中できない環境であることや、仕事上の問題を一人で抱え込んでいることが原因として考えられます。あるいは、単に「パーキンソンの法則」(仕事の量は時間が許す限り増え続けるという法則)が原因の場合もあります。

いずれにしても、企業はこの問題に対処する必要があります。残業をしても達成できる成果が増えるわけではなく、むしろ逆になる可能性があります。実際、勤務時間を少なくすることによって生産性の問題が解決した例もあります。これが、週4日勤務や1日6時間労働の導入を求める理由の一つとなっています。すべての作業をわずか4日で完了する必要があれば、努力してやり遂げるものだというのがその主張です。そうすれば週3日は休めるので、ウェルネスもワークライフバランスも改善し、これらすべてが仕事における生産性の向上につながります。

集中力の低下とコントロールの不足

では、勤務時間中に生産的に仕事を行うことを妨げる要因にはどのようなものがあるのでしょうか。一つには、集中力の低下があります。大量のメール、多すぎるミーティング、休憩、騒音、健康に悪影響を及ぼす建物なども、仕事に集中できない原因として挙げられています。

これらの問題のほとんどは、多くの場合、パンデミック中の在宅勤務では消え去っていたわけです。つまり、オフィス勤務の再開を計画しているならば、社員が在宅勤務の場合と同様に職場の環境をコントロールできる方法を模索する必要があるのです。室内の温度や騒音、オフィスの家具などをチェックしてみましょう。快適な状態になっているでしょうか。社員が自分に合わせて調整できるでしょうか。

リモートワーク時には、参加が必須となる対面ミーティングの回数は減らさざるを得ない状況でした。企業はバーチャル会議を導入することで問題の解決をはかりました。このソリューションは今後も引き続き、他のミーティング方法と併用されるでしょう。コロナ禍による環境の変化を契機として、今後のミーティングにおける集中力と生産性を向上させると同時に、ミーティング疲れの状態の再来を防ぐ方法についても検討する必要があります。

また、多くの企業では、他のコミュニケーションツールを利用して日常の会話や社内の連絡を行うことによって、メールへの依存が下がると思われます。この方法がストレスも少なく効果も高い場合は、オフィス勤務を再開した際にこれを継続しない理由はありません。

コミュニケーションの不足と情報の流れの不備

コミュニケーションが不足していると、社員の孤立感を生み、モチベーションの低下を引き起こします。仕事に必要な情報を見つけられないこと、疑問点について質問できないこと、上司にサポートを求められないと感じることは、すべて生産性に悪影響を及ぼします。また、こうした状況はモチベーションを下げてストレスの原因となり、さらに生産性を悪化させます。

多くの人々がリモートワークに移行したことで、コミュニケーションに注目が集まるようになりました。これは、離れた場所にいる社員のつながりを維持するのは非常に重大な課題だと企業が認識したからです。

ご自身の職場では、実際にコミュニケーションが問題となっているでしょうか。社員が職場に復帰した今こそ、実態について調査する必要があります。パンデミック時に、定期的な連絡、明確な目標設定、コミュニケーションの種類に応じた専用のチャネルなど、効果的なコミュニケーション手段を使い始めた場合は、使用を続けることを検討してください。コミュニケーションや情報の流れに問題がある場合は、今すぐ対処しましょう。そうしないと、オフィス勤務の社員とリモート勤務の社員が混在することで、問題が複雑になるおそれがあります。

生産性を高める方法

生産性を高める方法

生産性に関する目標を設定する

多忙だからといって、生産的だとは限りません。単にメールに返信するのではなく、生産性の観点から価値のある作業を明確にしましょう。例えば、営業担当者に1日のノルマとして課す架電数などに注目して、目標を達成するためのスケジュールを設定します。

生産性につながらない業務を管理する

生産性の観点から価値の低い業務に勤務時間を使われないようにする方法を考えてみましょう。メールの確認には特定の時間帯を設定するとともに、コミュニケーションツールを利用して重要性の高いメッセージを受け取れるようにすることを検討してください。また、会議を開催する場合は、本当に必要な会議なのか、会議で何を達成したいかを十分に考えたうえで行ってください。

マルチタスクを減らす

複数の業務を同時に進めることは、非常に生産的なように思えます。しかし現実には、複数の作業を一度に行うことは不可能です。マルチタスクでは、1つの作業から別の作業へとすばやく頭を切り替えるため、集中力を維持できずに貴重な時間を浪費することになります。特に、複雑な業務ではこの傾向が顕著です。複数のタスクを交互に行った場合、生産性が最大で40%も低下すると推定されています。この問題に対処するには、社員が1つの仕事に集中して完了させた後に次の仕事を開始できるよう、社員が仕事量を管理できる仕組みを整える必要があります。

トレーニングを提供する

ある調査では社員教育を行うことで生産性が向上するという結果が示されていますが、これは当然のことです。社員が自信を持って仕事を効率的に処理するようになると、生産性が向上する可能性が高くなります。また、社員が自分のすべきことを把握できていると、サポートやアドバイスを求める必要がなくなるため、他の社員が各自の業務に集中できるようになります。

正当な評価を実施する

すばらしい仕事をしていることを評価してもらうことで、モチベーションが高まり、エンゲージメントと生産性が向上します。さらに、他の社員に対しては、協力的な社内文化のよい手本を示すことにもなります。Deloitteによれば、評価をきちんと行っている企業では生産性とパフォーマンスが14%向上するとのことです。この場合、評価者が重要になります。ある調査では、上司による評価が最も重視され、その次に社内の上位者からの評価が続きます。

仕事は徹底的に他の人に任せる

「きちんとやり遂げる価値のある仕事は自分が担当しなさい」という言葉があります。しかし、この言葉が仕事のやり方に当てはまる人は、チームのメンバーを信用していない可能性があります。また、仕事を抱えすぎてストレスが高まり、生産性が低下する傾向にあることも示しています。上司は、チームの部下を十分に信頼し、細かい指示をせずに仕事を任せる必要があります。これが難しいと思われる場合は、部下にトレーニングを実施することを検討してください。

適切なツールを使用する

適切なツールを使用して効果的なコミュニケーションを行うことで、正しい相手にメッセージをきちんと届けることができます。これにより、情報へのアクセスが迅速に行えるようになり、チームのコラボレーションがスムーズに進むため、生産性に関する問題を解決することができます。

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