ビジネスコミュニケーションについて知る

ビジネスコミュニケーションとは何か、これを改善するにはどうすればいいのかを学びましょう。簡単に活かせるアドバイスをご紹介します。

ビジネスコミュニケーション | 所要時間: 9分
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ビジネスコミュニケーションについて知る

ビジネスと社員の成功は、情報をうまく共有できるかどうかにかかっています。しかし、66%の企業が社内のビジネスコミュニケーションに関する長期的な計画を立てていません。これがきわめて重大な誤りと言えるのはなぜでしょうか。コミュニケーションで最もよく起こる問題や、そうした問題の発生を防ぐ方法は何でしょうか。

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ビジネスコミュニケーションとは何か。

ビジネスコミュニケーションとは何か。

コミュニケーションは重要です。私たちは生活のあらゆる場面で、情報を伝えたり受け取ったりする活動を必要としています。効果的なコミュニケーションがなければ、自分の考えを聞いてもらうことも仲間とつながることもできず、最終的な目標を達成できません。このことが特に重要になるのは職場です。職場では、お互いの協力が個人やチーム、ひいてはビジネス全体の成功を左右します。

つまり、私たちが言う「ビジネスコミュニケーション」とは、組織の他のあらゆるメンバーとコミュニケーションする能力、そしてお互いにコミュニケーションする能力を意味するのです。

これはシンプルな考え方ですが、ビジネスの健全性に大きな影響をもたらします。ビジネスコミュニケーションは、日常業務のほぼすべての側面を支えています。また、業務の中には、リーダーとしての活動、スタッフのトレーニング、プロジェクトでの共同作業、リソースの管理など、情報やアイデアをうまく共有できるかどうかに左右されるものもあります。

適切なコミュニケーションが重要であることは言うまでもなく、それがもたらす価値を示す研究も数多く存在します。効果的なビジネスコミュニケーションを実現している組織は収益性と生産性が高く、社員の定着率も高いことが、複数の研究結果で示されています。にもかかわらず、ほとんどの企業は社内コミュニケーションの戦略作りを怠っています。70%の企業が特定のキャンペーンやイニシアチブをサポートする計画を立てている一方、社内コミュニケーションの長期的な戦略を文書で明記している企業は全体の3分の1ほど(33%)に過ぎません。

このような状況は間違っています。このことを正しく理解できるようにするため、あらゆる企業がビジネスコミュニケーションに関心を持つべき理由を探ってみましょう。

ビジネスコミュニケーションに関心を持つべき理由

ビジネスコミュニケーションに関心を持つべき理由

コミュニケーションは、社員のつながりに対する欲求に応える

20世紀の中頃、心理学者のアブラハム・マズローが「A Theory of Human Motivation」という論文を発表しました。この論文の中でマズローが唱えたのが、有名な「欲求の5段階説」です。マズローは人間が持つ複数の欲求を、生きていくために必要な基本的欲求から、心理的な欲求、そして最終的に自己実現を達成しようとする欲求へとピラミッド型に積み上げた図で表しました。

マズローの5段階説では、人間は生理的欲求(食糧、水、暖かさ、休息など)が満たされ、安全で安心できる状態を確保できるようになると、所属の欲求を最も重視するようになります。仲間とつながりたいという欲求は、私たちの毎日の幸福に欠かせない要素なのです。

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しかも、これは単なる理論ではありません。最近の研究によって、マズローの説が正しかったことを示す物理的な証拠が見つかっています。人間の脳の活動を測定したところ、私たちが何らかの作業に忙殺されることがなくなると、私たちの脳は常に他の人のことを考えたり、他の人の頭の中で起こっていること(考え、感情、目標)について考えたりするようになることがわかったのです。

「ビジネスコミュニケーションが活発な職場は、社員に幸福感をもたらす可能性が高い」

簡単に言うと、人間は生まれつき社会的なつながりを求めるようにできています。また、コミュニケーションがつながりの生命線であることは言うまでもありません。私たちの対人関係は情報のやり取りによって成り立っており、より大きなスケールで見れば、私たちは目標や価値を共有することで、自分がより大きなものの一部であると感じることができるのです。そしてこのことは、個人的な取り組みにも日常の仕事にも当てはまります。

ビジネスリーダーにとって、これは何を意味するのでしょうか。社員はコミュニケーションできる機会を必要としています。しかし、適切なツールやフォーラムが存在しなかったり、発言する機会が得られなかったりするなど、何からの理由でコミュニケーションができない状態では、社員の基本的な欲求は満たされません。そのため、彼らはおそらく幸福感が得られず、企業にとって懸念すべき状況が生まれます。なぜなら、そうした状況は人間の良識に反するというだけでなく、幸福感を得られない状態が社員の生産性を低下させ、離職率を高めるからです。

一方、その逆もまた真なりで、ビジネスコミュニケーションが活発な職場は、社員に幸福感をもたらす可能性が高いため、生産性の向上につながります。

つまり、テクノロジーに投資するということは、社員に投資するということなのです。

エンゲージメントが高い社員は最高のスタッフになる

ここまで述べたように、優れたコミュニケーションチャネルを提供し、それをサポートする文化を実現することは、社員の幸福にとって欠かせません。しかし、それだけでは動機として不十分だと思われる方は、適切なビジネスコミュニケーション体制を整えたら、社員がより積極的に仕事や会社全体に関わるようになるという点も考えてみてください。

また、繰り返しになりますが、エンゲージメントの高い社員は収益への貢献度も高いことが、研究によって明らかになっています。

Gallupの「Q12 Meta Analysis」レポートは、このような考え方を支持している数多くの出版物の1つです。「この調査は、Gallupの過去のメタ分析で確認されていたことを裏付けています。社員のエンゲージメントは、組織の業種や規模にかかわらず、重要な業績に常に大きな影響をもたらしているのです」とGallupは指摘しています。

また、MITの研究によると、きわめてエンゲージメントの高い社員は、会社に関する情報を十分に得て、より直接的な形で上司とコミュニケーションを取っていることがわかっています。しかし、ほとんどの企業で、完全なエンゲージメントを実現している社員はごく一部に過ぎません。社員の50%はビジネスの方向性についてよく理解しておらず、84%は経営陣から十分な情報を得られていないと回答しています。

すべての社員で完全なエンゲージメントを実現するというのは、きわめて困難で非現実的な話のように思われるかもしれませんが、これから説明するように、新しいテクノロジーが大きな助けとなる可能性があります。しかもこれは、追求する価値のある目標です。社員が会社のミッションを完全に理解し、全社的な議論に参加できるようにすれば、彼らは個人として会社の仕事に力を注ぐようになります。

このような全社的な連帯感はどのような会社でも実現できるものですが、そのためには、適切なツールとチャネルに支えられた確かなコミュニケーション文化を社内に創り出す必要があります。こうした文化の確立には時間とコストがかかるかもしれませんが、生み出された機会は社員に強いモチベーションをもたらします。

ビジネスのこうした側面をおろそかにすれば、落とし穴にはまることになるかもしれません。

個人の過ちが組織全体に影響を及ぼす

今日の企業にとって、適切なコミュニケーションは実に多くの点で欠かせないものとなっています。このようなコミュニケーションが欠けていると、問題が雪だるま式に大きくなる可能性があります。必要な情報のやり取りを妨げる問題が1人の社員に発生した場合、その社員個人をはるかに超えて混乱が広がるのです。その社員と関わりのあるすべての人に影響が及び、ひいては、それらの人々と関わりのあるすべての人に影響が拡大する可能性があります

つまり、社員が適切なコミュニケーションを取れない状態では、ビジネスを適切に運営できないというわけです。その結果、高い代償を支払うことになりかねません。400社を対象とした最近の調査では、わずか1年でコミュニケーションの問題が数十億ドル規模の損害を引き起こすことがわかっています。

コミュニケーションの問題にはさまざまな要因が考えられますが、最もよくある原因の1つは、適切なツールやチャネルへの投資が不足していることです。世界中の労働者の3分の1以上は、時代遅れのテクノロジーとプロセスのせいで自分の仕事が必要以上に困難になっていると考えています。このような考えを特に強く抱いているのはフロントラインワーカーですが、フロントラインでのコミュニケーションの多くが今でも鉛筆と紙に頼っていることを考えれば、驚くことではありません。

時代遅れのテクノロジーを「工夫して使う」ことは魅力的かもしれませんが、非効率がもたらすコストが短期的な節約効果をはるかに上回ります。一例を挙げれば、外部とのコミュニケーション手段として、ラジオやチラシといった古いチャネルだけを考える企業はほとんどないでしょう。この分野では、最新のプラットフォームを常にチェックし、駆使することが欠かせません。そして、このことは社内コミュニケーションにも当てはまります。

また、会社が最新のコミュニケーションテクノロジーを把握していようといまいと、若い社員は間違いなく駆使しています。

Z世代は会社がビジネスコミュニケーションに関心を持つことを期待している

Z世代は現在、世界の労働人口の4分の1から3分の1を占めていると推定されています。正確な割合がどうあれ、彼らの世代が社員に占める割合が今後10年間で増えることは明白です。この世代の優秀な人材を惹きつけたいのであれば、彼らが今日の職場に抱いている期待に応える必要があります。

なかでも、間違いなく期待されているのは、最新のツールやプラットフォームの導入です。テクノロジーとZ世代の親和性はよく言われることで、目新しい話ではないかもしれませんが、研究によっても裏付けられています。

最近行われた世界規模の調査によると、Z世代の80%が最先端のテクノロジーを仕事に使いたいと回答したほか、同じく80%が、テクノロジーはより公平な職場環境作りに貢献すると考えていました。しかし、このような意見を持っているのはZ世代だけではありません。ミレニアル世代もこの点を仕事選びの重要な要素と考える傾向が高いなど、この分野に投資する重要性は明らかです。

若い社員は、職場のテクノロジーが普段の生活で使っているテクノロジーと少なくとも同レベルになることを期待していますが、それだけでは不十分です。なぜなら、Z世代は人間的な価値観を重視することでも知られているからです。

テクノロジーを愛する一方で、Z世代の労働者の大半が仕事の「人間的な要素」に大きな関心を寄せています。彼らは、自分と競い合ったりモチベーションを与えてくれたりする同僚と仕事をしたいと考えています。また、みんなで作業したり考えたりすることを厭わず、助けが必要なときに協力してくれる同僚を求めています。実際、「協力的なリーダーシップ」と「職場での良好な人間関係」は、新しい仕事を探す際に最も重視される2大要素となっています。

企業の幹部は、ビジネスコミュニケーションに対して包括的なアプローチを取る必要があります。適切なツールの導入も重要なプロセスですが、社員が互いの話に耳を傾けることが奨励される適切な文化を生み出す戦略をとることで、そのプロセスをサポートしなければなりません。

ビジネスコミュニケーションのための長期的な計画が重要な理由、そしてこのような計画を持たない67%の企業が深刻なリスクを抱えている理由が、これでおわかりいただけたのではないでしょうか。そこでまずは、ビジネスコミュニケーションの最も一般的な7つの形態について理解することをおすすめします。

最も一般的なビジネスコミュニケーション形態とは?

コミュニケーションには7つの形態があります。その大きな違いは、共有する情報の種類、共有するタイミング、情報が社内を巡る経路にあります。

これから説明するように、各形態にはある程度重なる部分もありますが、ここではわかりやすくするために、すべてを個別の手法として紹介します。まずは、情報がやり取りされる経路の違いに注目してみましょう。

トップダウン型のビジネスコミュニケーション

トップダウン型のビジネスコミュニケーションは、指揮系統に関連しているのが普通です。これは、責任者が1人(または複数)いるグループのような社会階層に特徴的な形式です。

リーダーがチームや部署の他のメンバー、あるいは全社員に情報を伝達すると、その情報が組織階層を通じて、(理論上は)すべての人に届けられます。

トップダウン型コミュニケーションの強みは、階層ごとに情報の内容を調整することで、リーダーが情報の拡散を厳密にコントロールできるところにあります。例えば、CEOがポリシーの変更に乗り出す際は、情報がすべての社員に行き渡るまで基本的な事実が等しく伝わります。しかし、階層に応じて新たな情報や詳細な指示を追加することで、社員がポリシーを取り入れるのを支援できます。

もちろん、このしくみにはリスクもあります。この経路は最も弱いつながりによって成り立っているため、ある人が情報を正確に伝えることに失敗すると、他のすべての人に誤った情報が届いてしまいます。誰かがその間違いに気づく頃には、誤った情報がすでに広まっているのです。

ビジネスにとって、トップダウン型のコミュニケーションは不可欠です。このようなコミュニケーションを通じて、リーダーは会社のビジョンを共有し、アジェンダを設定し、全社員に行動を指示できます。しかしこの手法は、CEOがすべてを知る絶対者だという不確かな前提に基づいています。あらゆることがCEOの領域だというわけです。実際、トップダウン型コミュニケーションは、話をするのはリーダーであり、他の人はその話を聞くという考え方に由来しています。

しかし今は、そのような考え方に変化が見られます。リーダーシップとは耳を傾けることだという理解が広がり始めているのです。従って、企業の幹部は、組織内を逆方向に流れる情報に注意を払う必要があります。

ボトムアップ型のビジネスコミュニケーション

これはトップダウン型コミュニケーションの反対の形態です。このコミュニケーションでは、情報が企業の最下層から伝達されて上の階層に向かい、最終的に幹部に届けられます。

ボトムアップ型のコミュニケーションでも、情報の伝達がうまくいくかどうかは、各階層にいる人々の信頼性にかかっています。今から説明するように、ここには2つの面から問題があります。まず、ほとんどのビジネスリーダーは、現場の声に耳を傾ける必要性を感じていないため、社員の発言を奨励する文化を創り出そうとしません。また、たとえリーダーがそうした文化を創り出そうとしていても、指揮系統を遡って情報を簡単に伝えられるツールがないのが一般的です。

ボトムアップ型のコミュニケーションにはこのような問題があるものの、ビジネスにおいて重要な役割を果たすことが可能で、またそうなる必要があります。会社で働く人は誰もが異なる視点を持っています。フロントワーカーとオープンに話ができる経路を作り出すことで、顧客の考えや製造プロセスの効率化など、あらゆることに関して価値ある情報を得られるようになるのです。

また、すでに述べたように、社員に発言権を与えると、彼らは会社のより広い範囲の人々とつながりを感じられるようになります。これは社員にとっても会社の収益にとっても有益なことです。

横方向のビジネスコミュニケーション

水平的コミュニケーションとも呼ばれるこの形態は、情報交換の最も一般的な形です。横方向のコミュニケーションは、同じレベルの人々の間で行われます。例えば、チームメンバー同士で現在取り組んでいるプロジェクトについて話し合ったり、店長がベストプラクティスを共有したりするといったケースが当てはまります。

横方向のコミュニケーションは、考えられるほぼすべての手段で展開できます。ここで重要になるのは、社員が仕事のニーズに最適なチャネルにアクセスできることと、そのチャネルが全社的に利用されることです。

つまり、普及させることが重要なのです。したがって、横方向のコミュニケーションをサポートするプラットフォームはたくさんありますが、あまり多くのプラットフォームを使わないようにすることが肝心です。チャネルが少なければ、オンボーディングの手間も減るため、全社で普及を促すことが容易になります。たとえ1つの部署に高機能なツールの使い方を教えたとしても、他の部署の社員が使い方を知らないようでは意味がありません。

同期型および非同期型のビジネスコミュニケーション

トップダウン型、ボトムアップ型、および横方向型のコミュニケーションは、情報が組織を流れる方向を示したものでした。残りの4つのコミュニケーション形態は、どれもスピードとタイミングに関係しています。

同期型および非同期型のコミュニケーションは、その名が示す通り、正反対の存在です。同期型のコミュニケーションでは、情報が瞬時に、あるいはそれに近い速さで共有されます。誰かが発言すると、その発言を読んだり聞いたりした人がすぐに返事を返します。

同期型コミュニケーションの代表的な例は会話ですが、インスタントメッセージツールもこのカテゴリに分類されます。チャットアプリでメッセージを送信したら、すぐに返信が得られることを期待するのが普通です。相手がなかなか返信してこないと、フラストレーションがたまり、別の連絡手段を試したり、別の人にメッセージを送ったりするかもしれません。

非同期型のコミュニケーションチャネルは、最初にメッセージを送ってから返信が得られるまで時間がかかるという相互理解に基づいています。手紙は非同期型コミュニケーションの古典的な例ですが、今日の職場では、電子メールや掲示板の方が適切な例と言えるでしょう。

同期型および非同期型のチャネルで重要なことは、ビジネスではこの両方が必要になるということです。同期型コミュニケーションが情報をすばやく共有できるのに対し、非同期型コミュニケーションでは必要なときに情報が得られるようになります。

非同期型のツールを同期型コミュニケーションに使おうとすると、問題が起こります(その逆も同様です)。この点については、次のセクションで詳しく説明します。

静的および動的なビジネスコミュニケーション

静的なコミュニケーションでは、時間が経過しても一貫性が保たれるような情報が伝達されます。一方、動的なコミュニケーションでは、人々が情報を次々と更新していきます。

静的なコミュニケーション(「コールドコミュニケーション」とも言います)を理解する鍵は、それが永続的であるということです。例えば、社員向けのハンドブック、人事方針、在宅勤務ガイド、テクニカルサポートページなどが挙げられます。このような情報は、会社のイントラネットに掲載されていることが多く、毎日検索されることはないものの、たまに必要になった場合に閲覧できることが期待されています。

これに対し、動的なコミュニケーション(「ホットコミュニケーション」とも言います)では、情報の受け取り手が、その情報を変更したり更新したりできます。動的なコミュニケーションの本質は、複数の人が協力して情報を更新できるところにあります。デジタルコラボレーションツールによって、動的なコミュニケーションが今日の職場の中核となり、チームの全メンバーが一斉に同じドキュメントの作成に取り組めるようになりました。

静的なコミュニケーションでは、レコードが作成され、参照ポイントが用意されます。動的なコミュニケーションでは、コラボレーションに主眼を置きます。

この2つのコミュニケーション手法はそれぞれ異なる役割を担っており、ビジネスを成功させるには、これらの手法を社員に効率よく利用してもらう必要があります。

では次に、コミュニケーションで起こる可能性が高い問題とその解決策を探りましょう。

ビジネスコミュニケーションでよくある問題(とその解決策)

ビジネスコミュニケーションでよくある問題(とその解決策)

同期型のコミュニケーションは、大人数ではうまくいかない

5人の友達と一緒にいて、全員が同じ会話に参加している状況を思い浮かべてみてください。きっと会話が弾むことでしょう。しかし、さらに8人がその会話に加われば、誰にとっても自分の話を聞いてもらうのがきわめて難しくなります。

今度は、似たような場面で、50人が同じ会話に参加しようとしている状況を想像してください。これはカオスでしかありません。

同期型のコミュニケーションが批判されるのは、主にこのような点です。チャットアプリ、電話会議、対面でのミーティングは、どれも迅速な情報交換ができるように作られており、すべての参加者が自分の意見を表明できます。しかし、参加者が増えるほどノイズが増え、最後は誰にとっても使えないチャネルとなってしまいます。

解決策: ここで重要なのは、状況をコントロールし、過度なノイズを制限することです。そのための最もわかりやすい方法は、大きなグループを複数の小さなグループに分けることです。しかし、全員が同じ会話に参加する必要がある場合は、誰がいつ発言できるのかをルールに定めるようにします。例えば、数人の参加者を代表者として指名する、会話をコントロールする議長役を決めるといったやり方があります。直接参加できる人をさらに増やしたいなら、議長が質疑応答を行うといった方法もあるでしょう。

また、別のチャネルの利用を検討してもよいかもしれません。コラボレーション対応プラットフォームによっては、大規模な同期型コミュニケーションを促進するものもあり、CEOがストリーミング動画で全社員に話しかけるといったことが可能になります。ただし、1つのライブストリーミングで50人の意見を伝えようとしているなら、おそらくライブは諦めるべきです。その代わりに、非同期型のコミュニケーションを利用することを検討してください。

要するに、適切なチャネルを組み合わせ、人々がチャネルを利用する方法とタイミングについて明確なガイドラインを定めることが必要になります。この2つの要素が整っていれば、同期型コミュニケーションの限界が問題になることは決してないでしょう。

ボトムアップ型のコミュニケーションは、うまく行うのが難しい

すでに述べたように、企業がボトムアップ型のコミュニケーションを取り入れるべきだという考え方が生まれたのは、ごく最近のことです。したがって、ほとんどの企業はボトムアップ型コミュニケーションを効果的に行う体制を整えていません。適切なチャネルがなく、幹部はその効果を信じておらず、社員は発言してもいいという確信を持っていないのです。

また、ボトムアップ型コミュニケーションを促進しようと積極的に取り組んでいる企業にとっても、従うべき確固としたベストプラクティスがほとんどないのが現状です。

では、CEOが社員にとってより身近な存在になるには、どうすればよいのでしょうか。メッセージが殺到して返信できなくなるリスクを承知で、メールアドレスを公開すべきなのでしょうか。社員に対して上司に意見を述べるよう促し、その上司からフィードバックを受け取るという方法もあるでしょう。しかしそれでは、距離感がさらに広がり、「身近な存在になる」という精神に反することになりかねません。

解決策: 何よりも必要なのは適切なチャネルです。すべてのチャネルがボトムアップ型コミュニケーションに対応できるわけではないためです。具体的には、幹部が発言を公開し、コメントやフィードバックを促すことのできるチャネルが必要です。

企業向けのソーシャルネットワークは、このような目に見える形での大規模なエンゲージメントをサポートできる設計になっているため、良い選択肢と言えます。これに対し、メールは先の例で明らかなように、きわめて不適切なオプションです。たとえCEOが自分のメールアドレスを公開し、時間をかけて山のようなメッセージに返信したとしても、そのやり取りが他の社員に見られることはほとんどありません。ボトムアップ型コミュニケーションで重要な点の1つは、幹部が社員の声に耳を傾けている姿勢を示すことにあるのです。

どのチャネルを選択したとしても、重要なのはそのチャネルを適切にサポートすることです。新しいシステムが稼働したら、そのシステムを最初に利用するアーリーアダプターをサポートすることが欠かせません。彼らは他の社員に手本を示すことになるため、彼らが行っていることにスポットライトを当てることが大切です。

企業の幹部は、手本を示すという点でさらに重要な役割を担います。上級管理職は、社員の投稿や質問にリアクションや回答を行って、雰囲気を作り出す必要があります。CEOにとって、これは「いいね!」をしたり変わったコメントを残したりするだけかもしれませんが、チームリーダーであればさらに積極的に行動して、存在を感じてもらえるようにする必要があります。そうすることで、社員は積極的に自分の意見を表明したり、全社的な議論に参加したりするようになります。

何よりも重要なのは、フィードバックがあったら、その意見に耳を傾けることです。目に見える形で返答して、社員の発言に関心を持っていることを示すようにしてください。そうしなければ、社員に誠実さを疑われ、ボトムアップ型のコミュニケーションの文化を生み出すことができなくなります。

人はよく知っているツールを使いたがる

この問題にはいくつかの側面があります。まず、すでに述べたように、社員からの期待があります。

テクノロジーを十分に活用できていなければ、優秀な人材を惹きつけるのに苦労し、競争上の優位性を失ってしまうことになります。一方、もし自社のテクノロジーが使い物にならなければ、今いる社員が見切りをつけて消費者向けアプリを使うようになり、前に触れたようなセキュリティ上の大きなリスクが生じてしまう可能性があります。

もう1つのよくある問題は、人は本質的に変化に抵抗するものだということです。人は使い慣れたものを好むため、たとえ古いツールやチャネルに重大な欠陥があったとしても、新しいものを採り入れるのをためらいがちです。もっとも、これはある程度理解できる話です。新しいプロセスを学ぶには時間と労力がかかるため、多くの人はむしろ見ないふりをして、このまま逃げ切りたいと思うことでしょう。

しかし、そのまま放置しておくと、社員個人どころかチーム全体が異なるコミュニケーション手段を使いたがる状況になりかねません。ほとんどの社員が同じ建物で働いている場合ならまだしも、複数の国にまたがる複数の場所で事業を運営しているような場合は、各地域で固有の習慣や手順が広がり始めることが容易に想像できます。

自社の複数の部署が異なるチャネルを利用していては、組織間で適切なコミュニケーションを取ることが非常に難しくなります。また、ビジネスコミュニケーションに統一的なアプローチを採用しようとする努力も損なわれることになります。

「使いやすいソリューションを提供して、そのメリットを知ってもらえば、新しいツールをよりすばやく使ってもらえるようになります」

解決策: 最新のテクノロジーに投資することの価値については、すでに述べてきました。しかし、新しいプラットフォームの導入にあたっては、強力なロールアウトプランでサポートすることが欠かせません。

新しいテクノロジーが何を目的としているのか、何に代わるものなのか、なぜこの移行が決められたのかを、社員に理解してもらいましょう。そして、新しいツールの使い方について適切なトレーニングを実施し、時間がかかる場合があることを知ってもらうのです。段階的なアプローチを採用している場合は、同僚がいつどこで移行するのか、移行期間中にどのような手順が必要なのかを、すべての社員が完全に把握できるようにしてください。

これで課題の半分は解決できますが、変化に対する抵抗にはどう対処すべきでしょうか。そのためには、移行が簡単なプラットフォームを採用することで、経営幹部と社員がすぐに利用できる環境を作り出しましょう。技術的な問題をすべて解決できる素晴らしいツールがあったとしても、コンピューターサイエンスの学位が必要なほど移行が難しければ意味はありません。複雑なことを学びたがる人はいないので、誰でも扱えるものを探すようにしましょう。

また、言うまでもないことですが、導入するテクノロジーが社員のニーズを本当に満たすものであるかどうか確認する必要があります(使いやすさもその1つです)。これにより、提案している変化を社員に受け入れてもらいやすくなります。使いやすいソリューションを提供して、そのメリットを知ってもらえば、新しいツールをよりすばやく使ってもらえるようになり、その後も使い続けてもらえる可能性が高まります。

ここまで説明した理由から、意思決定プロセスには人事部門とコミュニケーション部門を必ず含めなければいけないことがわかります。IT部門は社員の本当のニーズをあまり気にかけていない可能性があるため、テクノロジーの選択をIT部門だけに任せないようにしましょう。

最後に、新しいプラットフォームを導入したら、迷うことなく古いプラットフォームは使うのをやめましょう。統合が極めて重要なので、単体で最高レベルのアプリをいくつも探すのではなく、社員が複数のタスクに利用できる使いやすいツールを見つけるようにしてください。効率が上がれば投資収益率が高まり、社員が学習やモニタリングに使うプログラムの数も少なくなります。

正しいツールを誤ったタスクに使う人もいる

個人的な好みから、特定の手段や手法ばかりが使われることがあります。その結果、人々がチャネルを適切ではないコミュニケーション形態のために使おうとするという、もう1つの問題が生まれます。

例えば、短時間に何十通ものメールをやり取りして「リアルタイム」の会話をするなど、非同期型のツールを同期型のコミュニケーションに使おうとするケースが考えられます。たしかに、このような形でコミュニケーションを取ることは可能ですが、インスタントメッセージで同じようなやり取りをする場合と比べてきわめて非効率です。その結果、関係者全員の受信箱にかなりの量のノイズが発生することになります。

同じように、同期型のチャネルを非同期型のメッセージに利用しても、逆効果をもたらします。これは、チャネルごとに単一の「リアルタイム」の会話を行うように設計されたインスタントメッセージツールをチームで使う場合によく起こる問題です。誰かが今後の議論のためにメッセージを投稿しても、やがて他の会話が始まると、そのメッセージは視界から消えてしまいます。

この問題を解決するために、重要な投稿を「ピン留め」してすぐに見られるようにしているツールもあります。しかし、最初の投稿時にログインしていなかった人がメッセージを見過ごしたり、重要な情報を見逃したりすることが容易に起こります。

そしてもちろん、静的な情報を動的なコミュニケーション形態で保管することには、明らかなリスクが伴います。このように、あるチャネルが意図されていないコミュニケーションに利用されると、すぐさま問題が発生します。

解決策: ここでも、適切な文化に支えられた透明性の高いプロセスを導入することが答えとなります。全社員向けの明確で全社的なガイドラインの策定に取り組めば、こうした問題に見舞われる可能性は少なくなるでしょう。以上の話から、このような問題が起こる可能性があることが、ビジネスコミュニケーションの完全な監査を検討すべき根拠の1つとなります(下記参照)。

ビジネスコミュニケーションを改善するための4つのアドバイス

ビジネスコミュニケーションを改善するための4つのアドバイス

現在のビジネスコミュニケーションの完全な監査を行う

ビジネスコミュニケーションの改善に本格的に取り組むのなら、現状を明らかにする必要があります。

チャネルに関して全社的な監査を実施して、会社全体からさまざまなインサイトを収集しましょう。うまく機能していることや、最もよくある問題は何なのか。社員が最も使いたがっているプラットフォームはどれか。このような質問に対する答えを調べることで、新しいツールが必要なのか、トレーニングの改善が必要なのかを知ることができます。

ビジネスコミュニケーションを投資すべきリソースと捉え、最小化すべきコストとは考えない

ハードウェアやソフトウェアのアップグレードは、すべての社員が対象となる場合には特に、膨大な費用がかかる可能性があります。しかし、この記事で明らかになったように、強力なビジネスコミュニケーションのメリットはコストを大きく上回ります。安易にコストを減らせば、ビジネスにとって許容できないリスクに晒されることになるでしょう。

重要なのは、組織に最適なソリューションに投資することで、詳細な監査から始めることをおすすめしているのはそのためです。

すべの人の声を聞き、明確なプロセスでサポートする

ビジネスコミュニケーションの真の価値を理解しているリーダーは、すべての社員を会話に参加させる方法を模索しています。組織のさまざまな立場からの意見を歓迎し、あらゆる手を尽くして発言を奨励しているのです。その一環として、幹部が積極的に耳を傾け、対応してくれるという信頼のもと、社員が反対意見を述べられるような文化を創り出しています。

そのためには、7つのコミュニケーション形態のあらゆるニーズに対応できる強力なチャネルを取り揃える必要があります。ただし、コミュニケーションプラットフォームが真価を発揮できるのは、社員がそのツールを最大限に活用するためのトレーニングを受け、そのツールがビジネス(ミッション、価値観、社内文化)にどう貢献するのかを理解している場合に限られます。

ビジネスコミュニケーションのロードマップを共有する

ビジネスと社員にふさわしいコミュニケーション文化を構築するには、真摯な取り組みが必要です。そのような文化を構築できたら、文化を維持するために注意と関心を払い続ける必要があります。

これを実現するためには、組織の全員が協力して取り組むことが欠かせません。変える必要があることを、時間をかけて検討してください。達成したいことを明確なビジョンとしてまとめ、そのビジョンを社員と共有しましょう。彼らに発言機会を与え、その声に耳を傾けることで、計画を練り上げます。こうした取り組みを行えば、完全に達成可能な目標が出来上がります。

ビジネスコミュニケーションの長期的な戦略を策定している企業は、全体の3分の1に過ぎません。その仲間に加わりましょう。

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