社員体験: オフィスの再開はどう影響する?
社員が職場に戻るようになり、上級管理職は社員体験(EX)を優先しています。EXが重要な理由と、組織でポジティブなEXを作り上げる方法を探ります。


社員体験はコロナ禍以前から注目されていました。最高人事責任者(CHRO)の84%がこれを優先事項として支持していましたし、1ZapposやAirbnbなどのブランドは、より効果的な活用方法を模索していました。社員体験、そしてそれが社員エンゲージメントに及ぼす影響についての認識は、コロナ禍以降大きく変わることになりました。2, 3
世界は根底から変わり、社員は以前よりも多くのことを職場に求めるようになりました。働き方が変わりました。いつ、どこで、どのように働きたいかを考えるようになった社員にとって、働く動機はもはやお金だけではありません。
では、これは社員にとって、そして社員が働く企業にとって、どのような意味を持つのでしょうか?まずは基本的な話から始めましょう。
オフィスの再開
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社員体験とは?
組織の一員である人々にとって、社員体験(EX)とは、そこで働くことがどのようなものか、という現実そのものであり、ポジティブなこと、ネガティブなこと、その間にあるすべてのことを指します。これは、採用から退職時の面接まで雇用ライフサイクルのすべての段階で経験するもので、社員が辞めた後により幅広いネットワークで支持してもらえるかどうかにも影響します。
EXは社員が職場で最高の体験をできるように設計されるべきであり、社員が「行かなければならないから」ではなく「行きたいから」出勤するような職場づくりを目指すべきです。しかし、具体的にどのようにこれを実現すればいいのでしょうか?
EXは、企業が価値観や文化を世間にどう示すか、誰かの最初の応募にどう対応するかなど、あらゆることに影響される可能性があります。新規採用候補者は入社後すぐに、その組織について無意識のうちに一連の評価を下しています。
かつては、こうしたタッチポイントや「モーメント」は物理的な職場環境の中で起こっていました。しかし、今や人々はさまざまなハイブリッドな方法で仕事をするようになり、EXにはバーチャルな環境も含まれるようになりました。
では、自分の会社が優れた社員体験のメリットを提供できているかどうかを知るにはどうしたらよいのでしょうか?以下は自分にまず問いかけるべき9つの質問です。
- 社員は幸福感をもって仕事に取り組んでいますか?
- 社員は、会社、リーダー、ビジョンにインスピレーションを感じていますか?
- 社員はリーダーを信頼していますか?
- 社員はリーダーが自分たちの声を聞いてくれていると感じていますか?
- 社員は会社のインクルージョン、平等性、多様性の実現に向けた取り組みを積極的に支持していますか?
- 仕事はあらゆる年齢や経歴の社員にとって有意義ですか?
- 会社や社員は(固定概念ではなく)成長概念を持っていますか?
- 社員は同僚や顧客の生活を改善できていると感じていますか?
- 仕事を効果的に進めるために、適切なツールやシステムが提供されていますか?
社員体験と社員エンゲージメントの違いとは?
社員体験と社員エンゲージメント(EE)という用語は同じ意味で使われることが多いのですが、この2つは異なる概念です。単純化して言えば、社員エンゲージメントは、良い社員体験の結果です。そのため、EEがマネージャーとしての重要な成果の1つであるならば、EXはそれに繋がる重要な要素になるはずです。
また、EXは社員を引き留めるための取り組みではなく、社員の仕事に対する意識の問題であると考えることが大切です。組織として優れたEXを達成することができれば、自然と高い水準の社員エンゲージメントが得られるはずです。
この点について、オックスフォード大学サイード・ビジネススクールの研究者は、満足度の高い社員は生産性が13%高いことを明らかにし、EXは個人のエンゲージメントだけでなく、ビジネス全体のパフォーマンスにも不可欠な要素であると述べています。

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優れた社員体験のメリット
優れたEXは、社員の働きぶりや協調性、会社全体の業績への貢献度など、ビジネスのさまざまな分野に影響を及ぼします。優れた社員体験により得られるメリットとしては、以下の例が挙げられます。
文化
真正性と誠実さは社員体験の重要な要素であり、まずはリーダーがそれを示さなければいけません。リーダーは誠実さ、公正さ、そしてポジティブな職場風土にふさわしい価値観を示すことが必要です。オフィスに戻る人、リモートワークを続ける人、その両方を行う人など、ハイブリッドチームで文化を作り上げていくことが重要です。
Airbnbの創業者であるブライアン・チェスキーはこう述べています。「企業文化とは、どんなものにも、どんなときにも当てはまる。誰か人を雇うとき、メールを書くとき、プロジェクトに取り組んでいるとき、廊下を歩いているとき、組織の中核となる価値はいつでもそこに存在している。その価値観を守ることで、企業文化を作り上げていく力が僕らにはある」 4
人材
コロナ禍という不安の中で、多くの人が新しいチャンスに備えながらも、安定した仕事に留まりました。現在、大量の退職者が発生し、雇用主は競争が激化する市場環境の中で新しい人材を確保するという課題に直面しています。組織は、社員の望みやニーズを理解しながら、社員体験を改善しつつ、最適な人材を獲得・維持するための新たな方法を見出さなければなりません。
欠勤の削減
欠勤対策の観点からEXは極めて重要です。社員が会社やその目標、価値観に共感し、コミットしていれば、必要以上に休みを取ることは少なくなります。その結果、生産性やチーム全体の士気の低下を防ぐことができるのです。
収益
顧客体験と同様に、優れた社員体験は収益に大きく影響する可能性があります。Salesforceの調査によれば、より良い顧客体験を実現するためにEXに優先的に取り組んだ会社は、収益の伸びが他社に比べて18倍速かったとのことです。
生産性
満足度の高い労働者は生産性も上がります。Bain & Coによれば、満足度の高い従業員の生産性を100%とすると、エンゲージしている従業員の生産性は144%に上ることが明らかになっています。さらに雇用主の目的に真に触発された社員の生産性レベルはなんと225%にもなります。5 したがってEXが改善すれば社員の生産性も上がると言えます。
イノベーション
革新的な企業には競争力があり、EXスコアが低い企業に比べ、優れたEXを提供している企業のイノベーションの度合いは2倍になります。
リテンション
新しく仕事を始めてから6か月以内に退職する人が10%もいることをご存じでしょうか?6 同じポジションで何度も採用し直すのは、非常にコストがかかります。ポジティブな社員体験の創造は、新しい社員を雇用して入社させたら終わりではありません。社員のニーズを満たすために常に見直すべき、継続的なプロセスです。
顧客体験
社員体験と顧客体験の間には明確な相関関係があります。社員が満足していれば、顧客もより良い体験ができます。MITの調査によると、最もEXが低い組織に比べてEXが最も高い組織は顧客満足度が2倍であることがわかりました。
社員体験の管理
「社員体験マネージャー」「社員体験責任者」といった役職名があることは、EXがいかに重要な存在になっているかを示しています。そのため、今では学問分野として認められているほどです。彼らは具体的に何をしているのでしょうか?
たとえば、社員体験マネージャーは、従来の人事、IT、マーケティングチームと連携して、社員体験の戦略を実現します。まとめると、社員のライフサイクルにおけるあらゆるタッチポイントや「モーメント」に、ポジティブにかつ計画的に影響を及ぼす役割を担っているのです。とはいえ、ポジティブなEXは1人では達成できないことを忘れてはいけません。組織内のすべての社員が、ポジティブな文化を守り、社員が最高の職場体験をできるようなシステムと価値を維持する責任を負っています。
General Electricのスーザン・ピーターズ人事担当上級部長は「私たちは、社員の目を通して世界を見て、社員とのつながりを保ち、社員にとっての大きなマイルストーンを意識することを、社員体験と簡単に定義しています」と述べています。
社員体験を改善するには?
人々が職場に戻るにあたり、社員体験を改善したいのであれば、社員ライフサイクルのいくつかの重要なステージに注目すると良いでしょう。ここではそのうちの4つをご紹介します。
採用
EXは、潜在的な社員が求人広告を見た瞬間、あるいは友人や連絡先から求人のことを聞いた瞬間から始まります。それは、応募や面接のプロセス、そしてリーダーが候補者に初めて会ったときの対応に至るまで、ずっと続いています。面接に来てくれた候補者にすぐにメールでお礼を言いますか?それとも他の人と面接している間、何週間も放置しておきますか?
オンボーディング
今では多くの企業が、優れたオンボーディング体験の重要性を認識しており、リーダーがEXにそれなりの配慮をする分野の1つとなっています。メンター制度やバディ制度は、新人の熱意を維持し、自信や能力、チームへの帰属意識を高めるための確立されたツールです。
また、提供する技術も、相手のニーズに合わせて、すぐに使えるもの、手に取って始めやすいものにすることもポイントです。
開発
EXに真剣に取り組んでいる企業は、優れた社内コミュニケーションに投資しています。また、従来の年次ごとの業績評価とは別に、より頻繁に社員の体験や「パルス」サーベイを行う傾向がありますが、そのおかげでマネージャーは即座にフィードバックを得ることができます。
また、評価や報酬に関してもより進歩的で、より頻繁により多くの社員の個別の要望に応えることができます。企業によっては、自社のプラットフォーム上で人を社会的に評価することで、幸福感やモチベーションを高めているところもあります。
評価
組織の中では、毎日素晴らしいことがたくさん起こっています。頑張る仲間に声をかけ、称えることは、大切にされていることを実感させるのにとても有効です。最近の調査によれば、社員の37%は評価が最も重要と回答しており、インクルージョンや帰属意識を重視する企業文化の形成に一役買っています。
つまり、社員体験を人間としての体験と考えるとわかりやすいでしょう。社員は自分の役割に目的と意味を見出すことができていますか?社員は所属する組織やブランドと永続的なつながりを享受することができていますか?社員一人ひとりが個人として見なされ、そのように扱われていますか?社員にとって思い出に残る有意義な時間をプレゼントすることで、社員のエンゲージメントを高めることができます。