「統合が優れた成果を生む」理由と、それがもたらす影響
今週、Facebookの開発者カンファレンスであるF8で、Workplaceは新しい統合ディレクトリを発表し、エンタープライズソフトウェアの未来に向けた一歩を踏み出しました。
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![better together meaning - Workplace from Meta](https://scontent-ord5-2.xx.fbcdn.net/v/t39.2365-6/43047108_2179221832397913_3025079731545440256_n.jpg?stp=dst-jpg_p640x640&_nc_cat=107&ccb=1-7&_nc_sid=9170fc&_nc_ohc=VjRHnMznQIYQ7kNvgFNp9Ea&_nc_ht=scontent-ord5-2.xx&oh=00_AYD7RqbZRV3aoLFHBNm4PpsaswljK3oOTiWIHaH6Qnwzhg&oe=66AA525D)
Workplaceが、Jira、Sharepoint、Survey Monkeyなど業界屈指のエンタープライズアプリケーションと連携できるようになりました。
常に複数のツールを使って仕事をするなら、どのプラットフォームを使っていてもそのツールどうしがシームレスに相互運用可能であるべき、とMetaは考えます。
Metaではこの戦略を「統合が優れた成果を生む(Better Together)」と呼んでいます。この戦略がいかに重要かは、エンタープライズアプリケーションの初期の時代を振り返ってみると分かりやすいでしょう。
初期の頃は…
かつては、データベースやアプリケーションの優良ベンダーからオンプレミスのソフトウェアを買うのが普通でしした。アプリケーションが捕捉した膨大なデータはウェアハウスに保管され、そのデータを別のシステムで利用できるようにする必要が生じた際には、データの抽出、変換、読み込みをするルーチンをITチームが実行しなければなりませんでした。ユーザー体験は後回しだったのです。
「ユーザー体験は後回しでした」
コンピューターの進化に伴い、ITチームはビジネス成果をもっと大きくできる可能性に気づきました。特定の目的専用のオンプレミスアプリケーションが増殖するなかで、これらのアプリケーション間で常時情報を交換できるようにすることがますます重要になりました。それに応えるかたちで、異なるシステムどうしをつなぎ合わせるためにITチームから生まれた新しい概念が「サービス指向アーキテクチャ(SOA)」でした。
これが、「統合が優れた成果を生む」時代の始まりです。Oracle、Microsoft、SAP、IBMなどの企業は、独自の「スタック」を大きく進化させました。しかし、個々の製品はスタック内のほうがうまく機能するため、顧客はたいてい1つのベンダーからバンドル製品を買うことになりました。
そしてクラウドが登場し、状況が一変しました。
SaaSアプリの登場
クラウドが広まり始めると、オンプレミス業界に地殻変動が起きました。
顧客は既存ベンダーによる囲い込みのせいで個々の目的ごとに最高の製品を選べないことに気づき、CIO(最高情報責任者)は警戒を強めていきました。この機会を鋭く捉えた企業が、特定の業務に非常に優れたクラウドアプリケーションによって空白を埋めるようになります。
「特定の業務に非常に優れたクラウドアプリケーションが空白を埋めるようになりました」
新たなプレイヤーとして出てきたのが、Salesforce、Google、Workday、Box、Dropboxです。どのソフトウェアも価格競争力が高く、使い勝手の良いものでした。しかも、購入も簡単です。
しかし、予期せぬ結果が待っていました。
クラウドに無数のアプリケーションが生まれることになったのです。その結果、平均的な企業でさえ、業務に必須のクラウドアプリケーションは数百を数えるまでになっています。大規模な企業では、マーケティング部門だけで平均90個を超えるアプリケーションが使用されています。これでは業務が簡単になるどころか、逆に負担が増えます。
仕事の本質は、作り、共有し、フィードバックを受け、決定をすることのはずです。しかし、数十のアプリケーションをまたいで業務を行っていては、重要な情報がサイロ化し、行方不明になってしまいます。
「だからこそ、統合がかつてないほど重要になっているのです」
アイデアを共有できず、フィードバックも回らず、決定を下せない。だからこそ、統合がかつてないほど重要になっているのです。
このことに気づいたのは私たちだけではありません。いくつもの開発企業が、大手プラットフォームやサービスプロバイダー向けの独自の統合の開発に着手しています。Salesforceの予想では、統合市場は年間300億ドル規模になるといいます。
消費者意識の変化
あまり話題には上っていませんが、エンタープライズ市場を席巻しつつある変化は他にもあります。それは、クラウドの発展さえも凌駕するほど広範囲に及ぶかもしれない変化です。
エンタープライズソフトウェアは何百という個々のアプリケーションに細分化されていきましたが、モバイルの発展でテクノロジーに対する人々の期待が変化するなか、コンシューマーテクノロジーは別の道に進みました。
「今の顧客は、仕事で使用するアプリケーションに、プライベートで使用するアプリケーションと同等のデザイン性、使いやすさ、信頼性を求めるようになっています」
モバイルの開発者は、常にユーザーのことを第一に考え、シンプルさと見た目の良さを重視しました。限られたピクセルをいかに使うかがアテンションエコノミーの世界での成否を分けることに気づいたからです。
こうした期待は、今やエンタープライズにも寄せられています。今の顧客は、仕事で使用するアプリケーションに、プライベートで使用するアプリケーションと同等のデザイン性、使いやすさ、信頼性を求めるようになっているのです。
メッセージを伝える
モバイルの台頭に伴い、新しいコミュニケーションのかたちが生まれました。今はメッセージの時代に突入しつつあり、親しい人とのコミュニケーションをWhatsAppやLINE、WeChat、Facebook Messengerなどのチャネルで行うようになっています。
動画やスタンプ、GIFなどの機能があるチャットアプリは、会話に即時性、視覚性、楽しさをもたらしました。対照的に、メールなどの長文メディアには時代遅れな印象が付きつつあります。また、メッセージ機能はAIの進歩の最先端に立っています。新しいタイプの会話やインターフェイス、消費者体験を生んでいるボットがよい例です。
「職場でも、スピーディーでスムーズな会話が期待されるようになりました」
職場でも、スピーディーでスムーズな会話が期待されるようになりました。その結果、従来型のエンタープライズチャットアプリが刷新されました。そして、必要なときに状況に即した情報を安全に入手できるボットや統合が登場したのです。
この変化は何をもたらすのでしょうか。それはようやく見えてきたところですが、変化の影響は計り知れません。かつて、業務でのコミュニケーションと言えば定型化されたやり取りによるものが主流でした。今は、定型化されていないコミュニケーションが即興で行われる時代です。メモもミーティングも長文で繰り返し情報共有をすることが重んじられていた時代は終わり、会話は端的な一過性のものへと進化し、手元の情報を使ってその場で決定が下されるようになりました。
「かつて、業務でのコミュニケーションと言えば定型化されたやり取りによるものが主流でした。今は、定型化されていないコミュニケーションが即興で行われる時代です」
最初はメールが使われていましたが、最新のツールはそれよりもはるかに現代に適応しています。
ここには3つの大きな力が働いています。すなわち、大規模な企業では数百もの優良なSaaSアプリを使用していること、モバイル体験の影響でエンタープライズソフトウェアに求められるものが変化していること、そしてメッセージの台頭によって人と人とのコミュニケーションのかたちも変化していることです。
ここで疑問が生じます。社内のいくつものアプリケーションに分散したすべての情報を議論の最中に確認できるようにし、社員の期待どおりに(あるいは期待を超えて)コラボレーションやコミュニケーションを図れるようにするには、どうすればよいのでしょうか。
その答えは、一元化された円滑なモバイル環境の中で重要なビジネスアプリケーションの統合を実現することです。では、実際はどのような感じになるのでしょうか。