フロントラインワーカーとは

デスクレスワーカー、エッセンシャルワーカー、分散型チームなど、フロントラインワーカーはさまざまな観点から定義されるので、ここでそれぞれの定義を1つずつ見ていきます。そして組織に彼らを巻き込み、エンゲージメントを高め、参画させる方法を探ります。

フロントライン | 所要時間: 5分
What is a frontline worker?

パンデミックで大混乱に陥った世界が少しずつ回復に向かっている今、未来の職場は以前とはずいぶん違ったものになりそうな様子を示しています。「ハイブリッドワーク」のようなフレーズは日常的に使われる仕事用語の仲間入りを果たし、社員もビジネスリーダーも、それぞれ何を必要としているのか、何を望んでいるのか、そして成功とは何かといったことを改めて考えるようになりました。昨今の危機的状況を通して、企業とその従業員に関する分類の方法が変わり、「エッセンシャル」、「キー」、または「フロントライン」として分類される企業や従業員が増えてきました。しかし、これらの用語は実際にはどのような意味を持つのでしょうか?また、極めて重要なこととして、ビジネスリーダーとマネージャが、従業員全員を変化や成功に向けた計画に参画し関わらせるよう徹底するにはどうすればよいでしょうか?

フロントラインワーカーとは

フロントラインワーカーとは

フロントラインワーカー」という用語は、新型コロナウイルス感染症の危機が始まって以来、説明をしなくても通じるほど身近な言葉となりました。「フロントラインワーカー」は、「キーワーカー」や「エッセンシャルワーカー」と同義として使われることの多い言葉ですが、危機的状況や困難な状況にあるにもかかわらず業務を継続しなければならない、生活に不可欠なビジネスに携わる人たちのことです。ただしビジネスの「最前線」で働く人は、物理的にその場にとどまって業務を遂行する必要があるという点で違いがあります。

しかし、Brookingsの調査によると、ヘルスケア、ホスピタリティ、公益ビジネス、輸送管理などのエッセンシャルインダストリーで働く人々のうち、どのくらいの人数がフロントラインワーカーにも該当するのかが明確にされておらず、フロントラインワーカーの法的定義もありません。一方、Econofactはフロントラインワーカーについて、従業員の70%以上が在宅勤務を実行できない職種の「エッセンシャルワーカーのサブカテゴリ」と定義しています。また、これは全従業員の推定52%を占める大きな層であると同時に、平均賃金が全労働者よりも低く過小評価されている層であるとしています。

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フロントラインワーカーはキーワーカーと同義?

フロントラインワーカーはキーワーカーと同義?

パンデミック中に英国の教育省は、新型コロナウイルス感染症の蔓延期にあって、生活の維持に不可欠な業務を担う業種で働く、キーワーカーを含む人々の公式リストを発表しました。このリストには、人々の支援に携わるスタッフ、感染症対策の専門家も含まれます。

具体的な業種としては、以下の通りです。

  • 医師、看護師、助産師、救急隊員、ソーシャルワーカー、教師などのヘルスケアおよびソーシャルケア

  • ジャーナリスト、宗教関係者、法制度の従事者、慈善団体などの公共サービス

  • 地方自治体

  • 食品の生産および流通

  • 公安および国家安全保障

  • 公益ビジネス、通信、金融サービス

ただし、ここに挙げた業種はいずれも生活に不可欠な業界のキーワーカーであることは明らかですが、そうした業種に携わる人々の多くはリモートで仕事をすることができ、実際にそのように働き、仕事をこなしていたこともはっきりしています。パンデミック対策という目的にかなった対応でした。しかし、オフィスの再開により、従来のデスクワークに当たるスタッフと、作業場、工場、路上、公共の場、または現場にいることが常に必要とされているスタッフとの間の差異が浮き彫りになりました。

オフィス勤務ではないスタッフに関するその他の関連用語

オフィス勤務ではないスタッフに関するその他の関連用語

以下の用語はいずれも同義とされることがよくありますが、明らかな違いがあります。

  • フロントラインワーカーは、業務を遂行するために物理的にその場にいなければならない人たちです。

  • エッセンシャルワーカーは、フロントラインでもリモートでも、日常生活に不可欠な製品やサービスを提供するために働く人々です。

  • キーワーカーは、エッセンシャルワーカーと同様に、政府が「キーインダストリー」(基幹産業)に指定した職種で働く人たちを指します。

  • デスクレスワーカーとは、オフィス以外の場所で、またはデスクを持たずに働く人々のことで、世界的には多数派です。営業担当者や工場の現場で働いている人たちのことを考えると、この人たちは、フロントラインワーカーにもエッセンシャルワーカーにも該当しない可能性があります。トータルで見ると、このような労働者は世界の労働力の80%を占めると推定されています

  • 分散型チームとは、メンバーが地理的に分散型した場所にいるチームで、異なる作業パターン、シフト、または異なるタイムゾーンで働いている場合もあります。分散型チームの中には、バーチャルで、あるいは時折対面で顔を合わせる場合もあれば、ほぼ完全に別々の状態で作業する場合もあります。つまり、企業側には、24時間体制で、あるいは広いオフィスに費用をかけることなく社内にスペシャリストのチームを擁して作業を進めることができるというメリットがあります。しかし、これは、組織として分散型チームのメンバーを積極的に参画させるような措置を講じない限り、メンバー側はポジティブな社風がもたらすメリットを受けられない可能性があることにもなります。

フロントラインでの業務を特徴づける主な要素

フロントラインでの業務を特徴づける主な要素

離職率

フロントラインやデスクレスの職務の多くは、特にホスピタリティ業界や小売業では、離職率が非常に高いという特徴があります。ファストフードレストランビジネスのように、前年比が100%(あるいはそれ以上)と高いところもあります。

人口統計学的な特徴

フロントラインワーカーは押しなべて賃金が低く、層としては少数層に該当する可能性が高くなります。

つながり

フロントラインワーカーの80%は、会社からEメールアドレスを支給されておらず、40%以上は職場のイントラネットへのアクセス権がありません。

デスクレスワーカーは、就業日の大部分の時間をWi-Fiやコミュニケーションツールに接続されていない外出先で過ごすことになります。その結果、業務連絡や、重要なメッセージ、または組織の目標、ターゲット、インセンティブに関する情報を見逃す可能性があります。また、電話会議、クラウドベースのストレージ、ファイル共有などの重要なツールにアクセスできない場合もあります。

フロントラインのスタッフのエンゲージメント

フロントラインのスタッフのエンゲージメント

未来の職場については、これまでに非常に多数の研究が行われ、また論文の題材として取り上げられてきました。しかし、ほとんどの研究で主眼となっているのはハイブリッドワークフォース、つまり組織の本部に拠点を置くスタッフがどこでいつ仕事をするかということに対する自己裁量権を高められる環境を作り出すことです。

一方で組織が検討を進めているのは、オフィスの構成、勤務形態、採用活動、研修などの面からの業務の慣行の再構築であり、その目的は働き方に柔軟性を取り入れることです。この柔軟性は、オフィス勤務だったチームが今期待を寄せているものですが、今後はビジネスを継続するための原動力にもなることでしょう。ダイバーシティやインクルージョン、帰属意識の醸成といった問題は、パンデミック後の世界での成功を目指す上で重要な要素となります。

それなのに、キーワーカーに分類されている職種に就いている人、つまりフロントラインやエッセンシャルインダストリーにおいての労働を続ける人については、新型コロナウイルス感染症収束後の未来に、あまり焦点が当てられていません。こうした人々にとって職場復帰とは「いつも通りの」現場に戻るのとほぼ同義で、一般消費者やサービス利用者と対面で接することです。

“フロントラインワーカーの10人に4人は、上司から届く連絡を「ほったらかし」にしていると答え、42%が自分たちには関係ないと答えました。”

明らかになりつつあるのは、フロントラインワーカーやデスクレスワーカーは労働者の大多数に該当するにもかかわらず、新しく再構築された職場で著しく過小評価されており、組織とのつながりも感じられずに幻滅しているということです。

Workplaceの「2021年版Deskless Not Voiceless (デスクがなくても、声は届く)」レポートによると、回答者の45%がフロントラインでの仕事を完全に辞めることを検討しています。デスクレスワーカーのほぼ半数(43%)は、新しいアイデアを共有するのに十分な自己裁量権が与えられていないと答え、4分の3はコミュニケーションの透明性という点では雇用主に不信感があると答え、70%は燃え尽き症候群になるリスクがある、あるいはすでにそうなっていると答えています。フロントラインワーカーの大量離職は、全職種においての大量離職と同様に脅威だと言えます。

フロントラインのスタッフを惹きつけ、維持し、管理する方法

フロントラインのスタッフを惹きつけ、維持し、管理する方法

Personnel Todayの最近の調査では、フロントラインワーカーの10人に4人は、上司から届く連絡を「ほったらかし」にしていると答え、42%が自分たちには関係ないと答えました。英国のフロントラインワーカーのほぼ半数は、本社のチームメンバーのことを1人も知らないと答えています。

フロントラインワーカーとデスクレスワーカーの従業員体験は、ハイブリッド勤務やオフィス常勤のチームの体験と同様に、緊急性の高いものとして対処する必要があることは明らかです。

フロントラインのチームを率いるマネージャが注目しなければならない、重要な分野を以下に挙げます。

  • 信頼の構築

    物理的な距離のある人々と信頼関係を築くのは困難なものです。マネージャと定期的に会って話す社員の場合は、メッセージに透明性はあるかもしれませんが、マネージャと顔を合わせることさえまれな社員からは、バーチャルでのメッセージ受信の知らせも届かない可能性もあります。フロントラインワーカーに、これまで届けてきた通知に関してのフィードバックを求め、集まった声を材料としてコミュニケーションの改善を図りましょう

  • オープンな社風の確立

    リーダーは、全社員が勤務場所に関係なく、アイデアやフィードバックを投稿する機会を等しく持っているかどうかを確認する必要があります。標準の勤務時間外に会議を開催したり、少人数のワーカーのグループをフォーカスグループとしたりといった行動がないかどうかを確認するということです

  • テクノロジーに投資

    すべてのフロントラインワーカーに対し、社内のコミュニケーション、カレンダー、スケジュールにアクセスするためのツールを持たせるよう徹底することが重要です。適切なモバイルコミュニケーションツールを選ぶとデスクレスワーカーとの分断状態を解消しやすくなるでしょう

  • 学習を職務の一環として組み込む

    フロントラインワーカーは、キャリアアップやチャンスへのアクセスを必要としています。昇進、残業、スキルアップの際のインセンティブプログラムを検討し、フロントラインワーカーのニーズに合った柔軟性を組み込みましょう

  • 心身の健康と安全

    会社とのつながりがないと感じることは、疾患、精神面の不調による欠勤、高い離職率につながる恐れがあります。健康イニシアチブにはフロントラインワーカーも必ず対象に含むよう徹底します。また、必要であれば外部の専門家の力を借りて、フロントラインワーカーに特化したイニシアチブを開設しましょう

  • 存在を認めていることを行動で示す

    リーダーは、フロントラインワーカーが特別な状況に直面していることについて、彼らを認め理解していることをフロントラインワーカーに対して示す必要があります。そのことがオフィス勤務の同僚に悪影響を及ぼすわけではないのですから。特別な状況とはつまり、自分の裁量で決断する必要があること、予期せぬ残業があること、予定外の変更があること、仕事の特定の権限外にある可能性のある状況が生じること、家族や私生活へのプレッシャーが増すことなどを指します。したがって、福利厚生でそれに報いるのもいいでしょう。たとえばフレックスタイム、休暇、その他のインセンティブの提供などです。これを実施することで、マネージャがフロントラインワーカーとオフィスワーカーの違いを理解していることを示せるでしょう

  • オープンで率直なフィードバックを歓迎

    全社員が率直に意見を述べる機会を与えるよう徹底し、いかなる貢献度も平等に評価されていることを表現する機会を持つことが、フロントラインのマネージャーとしての成功につながります。

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