従業員体験の未来はどうなるか

会社において従業員体験がどれほど重要なものかについて語られることが最近増えてきました。しかし、今後EXはどのように進化していくのでしょう。ゲストライターのDan Schawbel氏の論説をお読みください。

社員のエンゲージメント | 所要時間: 5分
Dan Schawbel
『Workplace Intelligence』ライター兼マネージングパートナー

会社のリーダーにとって、事業の中で従業員体験を最優先事項として扱うことが、今ほど重要なタイミングは他にありません。パンデミックにより、職場もその文化も激動の時期を耐え抜きました。そして従業員は自分の職場である会社に対して、さらなる見返りを求めるようになっています。

労働史上で初めて、金銭がもはや第一のモチベーションの源ではないという状況になっています。お金ではなく、連帯感や一体感、つながりという感覚を求めています。会社のリーダーから刺激を感じたい、またリーダーには自分の話を聞いてほしいと思っています。成功に必要な技術的ツールを使えるようになりたい、仕事を楽しんで、より大きな目的へのつながりを感じたいと思っています。

これは過剰な注文でしょうか?確かにそうです。しかし、やる価値はあります。正しい従業員体験を実現すれば、スタッフは会社にとどまって繁栄に寄与したいと思うものです。そうすることで会社はより高い定着率と生産性、社員エンゲージメントを手に入れることになります。しかしこれらの成果を達成するためには、会社が自社のDNAの再設計と変革を実行し、真の意味でスタッフを最優先する組織へと短期間のうちに進化する必要があります。

ライブパネル: 従業員体験の未来はどうなるか

従業員体験は、現在起こっている人材面での最大の危機に拍車をかけている重大なビジネスニーズです。当社のエキスパートによるライブパネルにご参加いただき、EX戦略を構築するために不可欠な各ステップについて学習してください。

会社において従業員体験がどれほど重要なものかについて語られることが最近増えてきました。しかし、EXを進化させるための方法については、長い間あまり考えられてきませんでした。しかし、特にこの2年間でさまざまな新しい考え方にスポットが当たるようになったことで、そこにも変化が求められています。

まず、どうすれば社員、特に困難な役割を担っている人々(フロントラインワーカーなど)の幸福を最大限にサポートできるかという問題があります。事業者はリモート勤務やハイブリッド勤務の新たな現実という困難とも戦っており、オフィスワーカーの体験と同じくらい効果的で連帯感のあるリモートでの勤務体験を生み出すことに、かなり苦労しています。

これらの問題のほか、今日のワーカーにとっての従業員体験の未来を形作っているトレンドについてもいくつか考察してみましょう。

今後の従業員体験は、従業員の幸福のサポートを目的とした人間中心のものになっていく

今後の従業員体験は、従業員の幸福のサポートを目的とした人間中心のものになっていく

これまでに、パンデミック中にメンタルヘルスの問題が急激に増加したこと1、またこの危機がこれまで見られなかった影響を継続的に職場に与えていることがわかっています。昨年は、ひと月あたり平均で約400万人のワーカーが退職しており、「大量離職時代」と言われています。退職率の急上昇の背景には多くの要因がありますが、仕事が人々の幸福に与えうる悪影響が非常に大きく作用しています。

幸い、多くの会社ではメンタルヘルスの危機の出現を認識しており、それに対応して自社の福利厚生を拡充しています。一部の会社では従業員の休憩時間を増やしたほか、ほとんどの会社でよりフレキシブルな勤務オプションやリモート勤務のオプションを提示しました。その他の会社では、子育て関連の福利厚生や育児休暇など、ファミリーフレンドリーな福利厚生を新設または拡充しました。そしてもちろん、健康面でのサポートが最前線かつ中心となり、40%近くの組織がメンタルヘルス関連の福利厚生を改善しました。

また各社はこの危機に対応すべく、常に全力投球の「頑張る文化」2を避け、より思いやりのあるリーダーシップモデルへと移行することで、より穏やかで働きやすい職場を作りました。リーダーは競争よりも共同作業を褒め、自分自身の健康を優先し、自社の従業員にも仕事と個人の生活をきちんと区切るよう奨励しています。

未来の職場においては、従業員の生活を向上させ、その家族の健康をサポートする従業員体験を設計することがより重視されるようになるでしょう。すでに数多くの会社が、一日中だらだらと仕事をすることにならないよう、ミーティングの「コアタイム」を設定するなどの習慣を採り入れています。将来は、週休3日制を導入したり、定時後のメール送信を禁止したり、有給休暇をすべて使い切って自身の福利厚生を継続的に拡充することを自社の従業員に求めたりする組織が出てくると思われます。

会社は従業員体験に対してリモート最優先のアプローチを取るようになる

会社は従業員体験に対してリモート最優先のアプローチを取るようになる

79%の会社がハイブリッド勤務モデルの導入を計画しています3が、このアプローチは一部の従業員にとってメリットにならない可能性があります。実際に、リモート勤務している従業員よりもオフィスで勤務する従業員がより高く評価されるという偏見を体験した従業員が存在します。しかし、なぜ、どのようにしてそのようなことが起こるのでしょうか。簡単に言えば、これは時代遅れの文化に計画不足が相まって起こるものです。つまりは、リモート勤務を許容する職場とリモート勤務を最優先する職場の間に大きな相違があるということです。4

リモートを最優先する文化では、リモート勤務がデフォルト状態であり、従業員全員が公平な条件で働くことができます。このような職場を作るためには、自社のシステムや処理をリーダーがくまなくレビューし、どの観点からもリモート勤務の従業員よりオフィス勤務の従業員がひいきされるような従業員体験にならないようにする必要があります。第1段階としてマネージャは、すべての連絡事項と会社情報を、全員がアクセス可能で検索もしやすいナレッジベースに配置する必要があります。

また雇用者は人事考課プロセスを再検討して、誰が出社しているかではなく会社にもたらすメリットに基づいて昇進や昇給が行われていることを確認する必要もあります。もうひとつ、リモート勤務する従業員が1人だけの場合でもビデオ会議でミーティングを行い、対面での会話に加われない人が1人もいないようにするというアイデアもあります。最後に、リモート勤務する従業員が現場の仲間と同様に業務に関わっていると感じられるよう、仮想的なコミュニティ作りを促す方法を雇用主が探すことが非常に重要です。

もちろん、よりインクルーシブな職場を作るために、テクノロジーが非常に重要な役割を演じることもあるでしょう。仮想現実(VR)や拡張現実(AR)などメタバースに支えられたツールにより、リーダーがリアルにごく近い作業スペースを作り、各所に散らばったチームでこれまでになかったような共同作業とつながりを実現することが、今後可能になっていきます。足を踏み入れると、まるで自分と同僚が同じ部屋を共有しているような感覚になる仮想オフィスを想像してみてください。多くの従業員にとって、この構想が近いうちに現実のものになるかもしれません。


未来の職場においては、すべての社員が相互に、またより大きな目的につながっていることを実感するようになる

未来の職場においては、すべての社員が相互に、またより大きな目的につながっていることを実感するようになる

リモート勤務には多くのメリットがある一方、大きなデメリットのひとつとして、従業員が孤独感、従業員どうしの関係だけでなく組織全体から切り離された感覚をより強く感じるというものがあります。多くの従業員にとって連帯感が希薄になり、以前のオフィスでの生活で得られていた社会的・文化的メリットに、おそらく潜在的に全員が気づき始めたことは残念な現実です。

大量離職時代に減速の兆しが見えない現状で、リモート勤務やハイブリッド勤務を行う組織のリーダーは、分散したチームを緊密にまとめるべく行動を起こしています。共同作業のための適切なテクノロジーを手に入れることは非常に重要ですが、そのようなテクノロジーはコミュニティ作りにも対応する必要があることにも、各社は気づきつつあります。事実、私の会社Workplace IntelligenceとKahoot!の調査では、72%のワーカーが勤務日に同僚と楽しむことが重要だと言っていることがわかっています。

また、従業員がもっと連帯感を持ちたいと思っているのは同僚だけではありません。このリモート勤務の現実によって、多くの人は会社の文化から切り離された、また仕事に対する目的意識や意味がなくなったと感じるようになっています。

しかしそれも、さらに多くの事業者が環境・社会・ガバナンス(ESG)に取り組むようになることで、2022年には変化していくと思われます。これは、それが正しいことであるからというだけでなく、人が自分の個人的な価値を会社の目的に合わせられるようにすることが、優秀な人材をひきつけ、保持するために不可欠な方法であることが理由です。

未来を見据えれば、高い給料や福利厚生だけでは不十分であることは明白です。人はとにかく目的意識と連帯感を感じたいものなので、理想的な従業員体験は、より大きな幸福に貢献し、従業員にも自分自身より大きな存在の一部であると感じさせてくれるような会社のものになっていきます。このような環境を提供できる組織は繁栄し、それができない組織は置いていかれることになるでしょう。


未来の従業員体験を設計するときは今である

未来の従業員体験を設計するときは今である

各組織はこの2年間で大きな成長を遂げてきましたが、従業員体験という点で言えば、成長と改善の余地はまだあります。多くの会社(とその社員)はまだ、リモート勤務やハイブリッド勤務という新しい世界に順応する過程にあります。その他の会社は、福利厚生は重要であり、人が仕事において真にサポートされていると感じるためには、社内文化の広範な部分に大きな変化が起きる必要があるということは認識しています。そしてそのような従業員や雇用主は、真の連帯感や目的意識を醸成することが職場にとってどれほど重要であるかを認識しつつあるところです。

スタート地点がどこであれ、最適な従業員体験を生み出すために最適かつ重要なタイミングは、今よりほかにありません。

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1「新型コロナウイルス感染症とあなたのメンタルヘルス」Mayo Clinic(2021年)
2「頑張る文化を称えてはいけない(有害で逆効果だ)」AllWork(2021年)
3「仕事の未来はハイブリッドである―予想される未来の仕事の姿」Wework(2021年)
4「リモート最優先の企業文化を作るものは何か」Memory.ai(2021年)
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