職場での評価: 惜しみない評価が与えるインパクト

企業が高い離職率に悩む中、社員をつなぎとめ、意欲を高めるには、その貢献を評価することが極めて重要です。では、そのために何をすればよいのでしょうか。

社員のエンゲージメント | 所要時間: 7分

社員に良い仕事をさせるために会社ができることとして、世界中の社員がトップに挙げているのは、貢献を評価することです。インド、中国、メキシコ、米国などの社員を対象としたOC Tannerの調査によると、自分の仕事を認めてもらうことがウィッシュリストのトップとなりました

異なる文化圏でこのように意見が一致したことは、努力を評価することがどれほど重要であり得るかを示しています。しかし、企業はこうした評価の重要性を認めながらも、常に最優先事項としてきたわけではありません。同じ調査によると、職場で自分が高く評価されていると感じている社員は、全回答者の61%に過ぎませんでした。しかし「大量退職時代」の到来によって社員エンゲージメントに注目が集まる中、こうした状況も変わっていく可能性があります。

「内容はさまざまですが、企業は社員に報い、適切に評価することの重要性に以前よりも目を向けるようになっています」と語るのは、英人材開発協会(CIPD)で褒賞および業績担当シニアアドバイザーを務めるCharles Cotton氏です。

「人材の採用や定着率の問題が外的な要因となって、職場での社員の扱いに注目が集まっています。企業は社員の貢献に対して公平に報い、適切に評価することに関心を寄せています。また、こうした取り組みについて、社員に加えて外部の顧客や投資家、その他の関係者にアピールする方法も模索しています」。


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職場での評価とは?

職場での評価とは?

職場で評価する、ということは、社員の貢献を認め、賞賛することです。これにはさまざまな形があります。例えば、単に「ありがとう」と声をかけたり、社内のソーシャルメディアで感謝の言葉を伝えたり、福利厚生や有給休暇を与えたりといったことが考えられます。金品を与えることも可能ですが、多くの場合、他の社員にもわかる形でポジティブな評価を与える方がより重要です。

「褒賞を与えることと、高く評価することとは同じような意味に取られがちですが、この2つの言葉には明確な違いがあります」と、Charles氏は説明します。「褒賞は多くの場合、有形かつ交換可能で、条件のもとに成り立ち、与えられることを予測することが可能です。一方の評価は、多くの場合その反対の性質を持ちます。すなわち、無形で関係性のもとに成り立ち、与えられることを予測することは不可能です」。

企業が社員の努力や成果に対して高い評価を与えられる機会は数多くあります。社員への評価には、次のような用途があります。

  • 成果の基準を示す

    公に評価することで、マネージャーはチームに達成してもらいたい成果の基準を示すことができます。

  • 節目をつける

    公表して祝福すべきことは、昇進だけではありません。勤続記念日を祝えば、帰属意識を高めることができ、社員も自分の功績が広く知られることに喜びを感じます。また、結婚や出産といった社員のライフイベントを祝う企業は、良い職場とみなされます。1

  • 入社1か月以内の新入社員を高く評価する

    入社後半年間は離職率が高いため、早い段階でポジティブなフィードバックを与えることが大切です。ボーナスのような褒賞型のインセンティブとは異なり、高く評価することには、相手が何らかの目標を達成するまで待つ必要がないという利点があります。また、リアルタイムでフィードバックを受けることに慣れている若い世代の社員の場合は特に、望ましいことをしたその場ですぐに褒めてあげるのが効果的です。

  • 自発性とイノベーションを促す

    評価することによって、イノベーション、自主的な働き方、問題解決が促されます。また、製品やサービス、働き方について、新たなアイデアを生み出すのにも役立ちます。

  • 適応能力を高める

    企業にとっても社員にとっても、変化への対応は同じように困難なものです。社員の適応能力を高く評価することで、変化への望ましい対応方法を示すことができます。

  • 会社の価値観を示す

    評価することとどのように評価するかは、会社の価値観を示し、期待される行動様式を社員に示すための手段となります。特に、社員が会社の価値観に沿って行った努力をマネージャーが高く評価し、感謝の気持ちを示すことで、他の社員に同じような行動を促し、好循環を生み出すことができます。

評価が社員エンゲージメントにもたらす価値

評価が社員エンゲージメントにもたらす価値

心理学者によれば、人は褒められるとドーパミン(快感をもたらす化学物質)が脳内に分泌されるそうですが、私たちの誰もが高く評価されることを好むことは間違いのないことです。企業にとっては、社員を高く評価する行為は、大きな具体的メリットをもたらすものでもあります。

社員エンゲージメントの向上

評価は、社員エンゲージメントにとって重要な要素です。社員によってはほぼすべての時間をリモートワークに費やしているなど、ハイブリッドな勤務形態への移行を進めている企業では、このことが特に重要です。評価することは、このようなリモートワーカーをポジティブなフィードバックの対象に加え、企業文化とのつながりを維持し、自分の存在が忘れられていると感じさせないようにしてエンゲージメントを高めるのに役立ちます。

従業員定着率の向上

Gallupの推定によると、1人の従業員を入れ替えるには、従業員1人の給料の0.5倍~2倍のコストがかかります2。このような金銭コスト以外にも、ノウハウの喪失や、高い離職率が招く士気の低下などの悪影響がもたらされます。一方、自分が高く評価されていると感じている従業員は、会社に留まる可能性がはるかに高くなります。ある調査によると、職場で高く評価されている人の63%は、自分が転職を検討する可能性は非常に低いと考えています。一方、職場で高く評価されることがほとんど、もしくはまったくない人では、この割合は11%でした。

企業文化の強化

チームワーク、コラボレーション、革新的なアイデアの検討といった行動を評価のプラス材料にすることは、企業文化の強化に役立ちます。

「評価制度を導入している企業は、多くの場合、社内で目にしたいと考えている行動を評価の対象にしています」と、Charles氏は言います。「ボーナスや奨励金などの金銭的褒賞を設けている場合でも、何を達成したかだけでなく、『どのように』達成したかを評価の対象にしています」。

パフォーマンス向上を促進

よく知られているように、仕事に積極的な社員ほど、生産性を高めようと自発的に努力する傾向が強くなります。そして、このことは企業の数字にも現れます。ある調査によれば、職場での幸福感は、生産性を31%高め、売上高を37%増やします。また、働き方にも影響を与え、仕事の精度を19%向上させます3

高く評価していることをどのように伝えるかについて、万能のアプローチはありません。モチベーションとなるものは人によってさまざまであり、ちょっとした意思表示をされただけでも多額な褒賞を貰ったのと同じくらいに感じる人もいます。また、自分を高く評価しているのが誰かという点も重要です。高い評価は直属の上司やリーダーから与えられるものと考えがちですが、同僚からの評価(すなわち社会的評価)も非常に大きな影響力を持っています。

「これまでは、評価はどちらかと言えばトップダウンで行われてきました」とCharles氏は言います。「しかし今では、同僚による評価が行われるようになっています。これには、同じチームのメンバーだけでなく、チーム外のメンバーも含まれます。さらに、テクノロジーの進化がこの傾向に拍車をかけています。オンラインプラットフォームを使うことで、より簡単に同僚を評価できるようになったためです。また、このしくみを社外に広げている企業もあります。顧客や取引先も、社員の貢献を評価するよう奨励されているのです」。

高い評価に伴う褒賞についても、柔軟なアプローチが取られるようになっています。上司が褒賞の内容を決める時代は終わりました。今では社員が、自分にとって意味のある特典や褒賞を選べるようになっています。こうした褒賞には、目標達成をみんなで祝う機会やクーポン券、半休や休暇の付与などの勤務時間に関するものなどがあります。

職場における評価の事例

職場における評価の事例

社員の評価制度に関する以下の際立った成功事例では、その具体的な方法が明かされています。

  • Cisco: 従業員体験に関するさまざまな賞を受賞しているCiscoには、あらゆる社員が同僚を推薦して報奨金を付与できる「Connected Recognition制度」があります。また、Ciscoで働き始めてから1年目および5年目の社員が自分で選んだ褒賞を獲得できる制度もあります。

  • McDonalds: このファストフードチェーンの社員は、勤続年数に応じてギフト券を獲得できます。また、店舗で割引を受けたり、学習や能力開発の機会を得たりすることもできます。

  • General Motors (GM): 同社の評価制度は26か国で利用されています。社員は評価をポイントとして受け取ったり、他の社員に与えたりすることができ、そのポイントを自分で選んだ褒賞に換えることができます。

社員評価プログラムの作成方法

社員評価プログラムの作成方法

正式な評価プログラムを導入することには、大きなメリットがあります。評価プログラムによって、評価の対象が明らかにされ、また、評価を会社の価値観と一致させ、一貫性を持たせることが可能になります。また、透明性を確保し、公平感をもたらすのにも役立ちます。社員は、上司が自分をどう評価し、どのように報いてくれるのかを知ることができます。

社員評価プログラムの作成にあたり、欠かすことのできない手順を以下に示します。

  • 目的と目標に焦点を合わせて設計する - 達成したい内容と達成時期を定め、進捗を測る方法を決めます。

  • 企業文化と一致させる - 褒賞を与えたい行動と、その行動と会社の価値観との関連性について検討します。

  • 評価プラットフォームを決める - デスクを持たない社員やフロントラインワーカーも評価の対象になるように、モバイルに対応している必要があります。

  • 経営陣と管理職の同意を得る - 「管理職が社員の貢献を評価するのであれば、管理職をサポートし、やり方を教える必要があります」とCharles氏は述べています。

  • 評価制度について社員に伝える - プログラムを周知させるためのキャンペーンを実施し、社員全員に伝えます。

  • 頻繁かつ定期的に評価を行う - 評価し過ぎると効果が弱まりますが、少なくとも数か月に1回は評価を行うことが重要です。また、極めて優れた業績を上げた社員がいる場合は、すぐにその貢献を評価するようにします。

  • 褒賞を選べるようにする - 可能であれば、さまざまな店舗のクーポン券を用意するなど、社員に選択肢を与えます。

  • フィードバックを集めて効果を測定する - 報酬のみに関係するプログラムであれば、その効果を測定することは比較的簡単です。例えば、性別による賃金格差が縮まっているかどうかを確認すればよいでしょう。しかし、評価とはもっと主観的なものです。そこで、社員にアンケートを取って自分が評価されていると感じるかどうかを尋ね、その理由を確認してみましょう。「指標を見ることで、誰がいつ、どのような理由で、誰から高く評価されているのかを確認できます」とCharles氏は述べています。

評価プログラムは一晩で完成するようなものではありません。しかし時が経つとともに、社員の離職率や欠勤率、会社の売上高や収益にポジティブな影響がもたらされ、組織内のつながりが強まり、職場での幸福度が高まるなど、プログラムの持つ効力が徐々に見られるようになるはずです。

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1 「5 Findings from the 2018 SHRM/Globoforce Employee Recognition Survey」、workhuman.com、2021年
2 「This Fixable Problem Costs U.S. Businesses $1 Trillion」、Gallup、2019年
3 「The Happiness Advantage: The Seven Principles of Positive Psychology That Fuel Success and Performance at Work」、Shawn Achor、2010年
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