情報共有の文化を築く方法

「知は力なり」と言いますが、職場の成長要因として見過ごされがちなのが知識や情報です。組織での情報共有の文化を育てるためには何ができるでしょうか。

チームのコラボレーション | 所要時間: 8分
情報共有とは

情報共有とは

知識は組織の血液です。組織が置かれている市場環境や組織のプロセス、組織として提供できるスキルと知見を共有することは、成長と生産性向上に欠かせません。

知識を効果的に共有すると、全員にメリットがあります。プロセスが加速して簡単になり、皆が過去の事例に学び、タスクが不必要に繰り返されることがなくなり、リスクが減ります。例えば、過去のプロジェクトを文書化するだけでも、新しいプロジェクトの開始時に近道を見つけ、落とし穴を避けるのに役立ちます。

反対に、組織として蓄えられている知識にアクセスできないと、毎回ゼロからスタートせざるを得なくなります。

組織の知識は、一般的に2つのカテゴリに分類されます。

  • 形式知(明示的知識): 組織の文書(メール、メッセージ、トレーニング動画、ポリシーなど)に含まれている知識。文書化されているので、比較的簡単にアクセスして共有することができます。

  • 暗黙知: 形式知よりも捉えにくい知識で、日々の経験や業務の実践、組織文化の中に、知見や学びとして見られます。暗黙知は定義するのが難しく、それゆえに共有も簡単ではありませんが、形式知と同じくらい重要です。これは、社員が組織を去るときに身に付けたものとして持って行ける類の知識でもあります。

知識を完全に一元化している組織は存在しないので、社員が知識として持っているものを共有するかどうかは、ある意味、その人次第です。しかし、放っておいても知識の共有は起こりません。組織として、効果的な情報共有に適したプロセスと環境を作る必要があります。

Workplaceで業務を簡素化

オフィス勤務再開の周知からハイブリッドワークの導入まで、Workplaceは業務を簡素化します。

職場における情報共有が重要な理由

職場における情報共有が重要な理由

効果的な情報共有は、社員と業務の進め方の両方に計り知れないプラスの影響をもたらし得ます。

プロセスを合理化できる

過去の経験からの学びをプロセスに活かせば、業務が円滑に進みます。過去の過ちに学べば何がうまく行って何がうまく行かないかが分かるので、社員がやりやすい形に業務の方法を効率化できます。

情報のサイロ化を解消できる

ある部署の知識を組織全体の知識として活かし、別の部署の学びを自部署に応用する方法が分かるようになります。これにより、二度手間が減り、チーム間コラボレーションがはるかに簡単になります。

生産性が向上する

情報を探すことに費やされる時間とリソースが減り、社員が目の前のプロジェクトや業務の遂行により多くの時間と労力を割けるようになります。McKinseyが4つの部門の社員を観察したところ、タスクに役立つ情報や手伝ってくれる同僚を探すのに週の20%近くの時間が費やされていたそうです。これは相当な時間の浪費です。

信頼を築ける

情報共有が許されれば、社員間や社員と幹部間の信頼を築けます。安心して情報を共有でき、また自分の知識が感謝されていることが分かれば、仕事の満足度と社員のエンゲージメントが向上します。

トレーニング費用を節約できる

キャリア開発のためには、社員に正式なトレーニングを提供することが欠かせません。しかし、組織内の知識とスキルはもっと効果的に同僚から同僚へと伝えることができます。社員の自然な行動を利用するのです。例えば、労働者の55%は新しいスキルを学ぶときに上司よりも同僚を頼るという調査結果があります。

社員をエンパワーできる

情報共有を効果的に行えば、自信を持ってベストを尽くすのに必要な情報を、社員が手に入れることができます。

情報共有 vs 情報の貯め込み

情報共有 vs 情報の貯め込み

「情報共有で業務がやりやすくなるなら、誰しもそうするのでは?」。そう思うのも無理はありません。しかし、これは必ずしも真実ではありません。情報共有が常に自然発生的に起こるとは限らないのです。

実際、Kahoot!の調査によれば、被雇用者の58%が、同僚の利益になり得る価値ある知識を貯め込んでいると答えています。

社員が知識を貯め込む理由はいくつかあり、必ずしも故意ではありません。

  • 時間がない – 情報共有のための時間が確保されておらず、業務の合間にその時間を作ることができないと感じている。

  • プロセスがない – 自分の知識を文書化して共有する手段が確立されていない。

  • ロジスティクス – 社員の居住国やタイムゾーン、使用言語が異なっている場合、そのどれもが情報共有を減らす要因になる。

  • 不安 – 「知識共有すると自分の地位が脅かされる気がする」と疑心暗鬼になっている。

  • 信頼がない – 「組織のリーダーを信頼しているか」という質問に対し「強くそう思う」と答えた米国の被雇用者はわずか21%。知識を共有することに不安がある場合や自分に不利に働くと感じている場合、知識の共有は起こらない。

  • 業務がサイロ化されている – 別の場所の知識が生きることもあるが、そのことに社員が気づいていない。または、部門を超えて働くチャネルが一切存在しない。

  • ライバル意識 – 共通の目標に向かって協力せず、ほかのチームや同僚に競争意識を抱いている。

組織の情報共有を改善する10の方法

組織の情報共有を改善する10の方法

情報共有で特に難しいことの1つは、社員に無理強いできない点です。それでも、情報の共有と活用をもっと簡単にできるようにするためにできることはあります。以下にその例を紹介します。

1. 情報共有の障壁を明らかにする

知識が効果的に共有されていない場合、それに気づくことが多いのはマネージャです。部下から何度も同じ質問をされれば、そのたびにフラストレーションが溜まっていくでしょう。社員が知識を貯め込んでいることが分かったら、その原因を突き止める必要があります。原因は、チーム間で不健全な競争意識が生まれているせいでしょうか。それとも、ロジスティクス的に知識を共有できないからでしょうか。原因を特定してそれに対処すれば、情報が流れるようになります。

2. 情報共有のポリシーを定める

情報を共有すべき理由とその方法を説明したポリシーを定めることで、情報共有を組織の正式な目標にします。

3. 情報共有プラットフォームや情報共有ライブラリを構築する

情報共有の文化を作るには、さまざまな場所で知識を共有できるようにすることが非常に重要になります。その方法の1つは、ドキュメントリソースの一元化です。これには、例えば、組織のイントラネットにその場所を作る、あるいは専用のコミュニケーションチャネルを設けるなどします。リモートワーカーとハイブリッドワーカーを含めた全員がその情報ライブラリにアクセスでき、使い方を分かっている状態にしましょう。

4. 振り返りセッションを毎週行う

全部が全部、文書化しやすい知識とは限りません。そこで、現在進行中のプロジェクトやそこから学べることについて共有し、話し合える場を持つことが重要です。社員から、役に立つと思うリソースや情報も共有してもらいましょう。マネージャが模範となり、貢献に対して感謝することで、社員が安心して積極的に情報共有ができる空気を作ってください。

5. デブリーフィングを行う

1つのプロジェクトが終わるたびにデブリーフィングの段階を設け、成功した点や改善すべき点について話し合えるようにします。評価を下すのではなく、将来の改善に重きを置きましょう。

6. コラボレーションの強化を促す

コラボレーションは、業務を通じて知識を共有する理想的な方法です。コラボレーションを促すために、そのための場を作りましょう。例えば、コミュニケーションソフトウェアやVR/ARを使ってオンラインでコラボレーションを行ったり、オフィスの休憩スペースなどを利用します。コーヒーマシンやソーシャルチャットチャネルなど、情報共有を行えるインフォーマルな場所で過ごす時間も忘れずに作りましょう。

7. リモートワーカーも巻き込む

リモートやハイブリッドで働く人が大きく増えている状況では、オフィス勤務でない人も情報共有の取り組みに巻き込むことが非常に重要です。そうした人が情報共有やトレーニングのセッションに参加できるようにしましょう。そして、自身の経験や学びを共有するように促しましょう。

8. 新入社員をメンタリングする

オンボーディングや入社直後の時期は、インフォーマルに知識を伝達するのに最高のタイミングです。新入社員は、実務面でも、組織の文化と価値観の面でもメンターの経験から学ぶことができます。その後は、コーチングで知識を固めるとともにキャリアアップをサポートします。

9. 組織外の専門家から知見を共有してもらう

外の人間から専門的な知見を共有してもらうことは、組織に知識を浸透させるのに非常に効果的です。リモートワーカーとハイブリッドワーカーも忘れずに巻き込みましょう。

10. 自分が模範となって失敗も成功も共有する

社員に期待することを、リーダーが行動で示す必要があります。そのためには、自らの知識を共有し、関わったプロジェクトから学ぶ姿勢を見せます。うまく行かなかったことも隠さずに伝えることが重要です。そうすれば、失敗は学びの機会であることが社員に伝わります。

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