従業員体験を測定する方法

従業員体験の質が企業の成功に大きく影響する可能性があります。この記事では、ビジネスにおける従業員体験を測定する理由、タイミング、その方法について説明します。

従業員のエンゲージメント | 所要時間: 7分
従業員体験を測定する理由

従業員体験を測定する理由

従業員体験(EX)はトップ企業の間で重要な差別化要因になっていますが、それには正当な理由があります。従業員体験は従業員のエンゲージメントと定着率を高める最も強力な要因の1つです。

McKinseyの調査によると、ポジティブな従業員体験を得ていると報告した従業員は、ネガティブな体験をしている従業員よりもエンゲージメントレベルが16倍高く、会社に留まりたいと考える可能性が8倍高くなっています。

また、43%の企業が新型コロナウイルス感染症の世界的流行により従業員体験が悪化したと語る中、従業員体験は、ビジネスの世界で「ニューノーマル」を形作る際に焦点となる重要な領域になっています。

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従業員体験は主観的で個人的なものですが、適切なツールと技術を使えば、個々の従業員のストーリーを包括的な測定値に変えることができます。しかし、なぜ従業員体験を測定するのでしょうか?そのようにして従業員体験を数値化すると、次に示す多くのメリットが生まれます。

  • 進捗状況を経時的に測定する

    過去の測定値をベンチマークとして使用することで、EXプログラムの成功を評価したり、軌道をそれていないかどうかを随時確認しながら進めたりすることができます。また、こうした測定は、不況や生活費など、外部の要因が従業員に与える影響をモニタリングすることに役立つので、適切な措置を講じて従業員をサポートできます。

  • 有効な要因とそうでない要因を見定める

    従業員体験は、物理的なワークスペース、企業文化、マネージャーとの関係など、いくつかの要素で構成されます。EXを測定できれば、優れたEXを促進している要因を特定したり、EXの質をさらに高める可能性がある要因を把握したりできるようになります。

  • 社内外でEXについて話し合う

    EXの代表的な測定値が得られると、EXについて客観的かつ建設的に議論できるようになります。それは、単なる意見の問題ではありません。また、EXスコアは、株主に透明性を示したり、入社する可能性のある人に会社が何を提示できるかを伝えたりするために使用できます。EXスコアは、たとえば従業員体験指数として、ますます多くの企業でレビュー・比較されています。

EXを測定しないと、どうなるでしょうか?ポジティブな従業員体験と従業員の高いエンゲージメントを実現するだけでは、ビジネスの業績を簡単に世界と共有することはできません。組織は成果を共有することで、新しい人材の獲得競争で優位に立てるほか、優れたEXを維持するための措置を講じたり、発生した問題を解決したりできるようになります。

従業員体験の指標

従業員体験の指標

EXの測定方法は会社の目標やリソースによって決まり、指標は、シンプルなeNPS (従業員ネットプロモータースコア)から、詳細な意識アンケート調査、従業員からのフィードバック、従業員の分析から得られた細かい測定値に至るまで多岐にわたります。

EXの単一の指標を見るだけでは、全体像を把握することはできません。従業員体験は多元的であり、さまざまなやり取りの積み重ねを通じて徐々に形作られます。従業員体験を意味のある形で理解し、改善のために利用するには、1つか2つの指標ではなく、指標の体系を活用する必要があります。

そうするには、カスタマイズされた方法か、「既製の」システムを使用します。後者の利点は、ほかの会社の結果と照らし合わせて標準化できる結果が得られることです。つまり、市場における自社の位置を知ることができます。

The Employee Experience Advantage』の著者であるJacob Morgan氏はEXを測定するために、17個の指標が含まれ、3つの部分で構成されるモデルを使用しています。このモデルは、包括的なEX測定プログラムの構成要素を示す好例です。

物理的な環境

以下の指標は物理的な職場を対象にしており、具体的には次のような指標が含まれます。

  • 職場にさまざまなタイプの仕事に使用できる多様なスペースがあるかどうか

  • 職場にさまざまなタイプの仕事に使用できる多様なスペースがあるかどうか

  • 会社の価値観が職場に反映されているかどうか

技術的な環境

以下の指標は、従業員が仕事を行うために使用しているハードウェアシステムやソフトウェアプラットフォームに関係しており、具体的には次のような指標が含まれます。

  • 機器が「コンシューマーグレード」(つまり、私生活で選択するであろう製品)かどうか

  • 全員が必要なテクノロジーを利用できるかどうか

  • 技術的な要件やビジネス上の要件だけでなく、ユーザーのニーズを念頭に置いて設計されているかどうか

文化的な環境

文化的な環境に関する指標とは、従業員が同僚、経営陣、そしてより広範な業界とどのようにやり取りしているか、さらには、組織の価値観が日々の労働生活にどの程度反映されているかを示すものです。具体的には次のような指標が含まれます。

  • 組織が従業員の心身の健康に投資しているかどうか

  • 職場で従業員が感じているダイバーシティとインクルージョンのレベル

  • 能力開発と昇進の機会

  • 従業員がチームの一員として評価され、公平に扱われていると感じているかどうか

  • ブランドの価値と職場で目的意識を持つことに関係する指標

  • 従業員が自社で働くことを友人にすすめるかどうか

従業員体験のKPI

従業員体験のKPI

どのEX指標を使う場合でも、社内の従業員体験の根本的な推進要因を把握し、従業員体験を反映したKPIを確立することが重要です。

EX KPIをすでに設定している場合でも、より広範な世界での変化に照らし合わせてEX KPIをレビューすることが重要です。2020年以来、優れた従業員体験を促進する要因は進化しています。従業員は、仕事の意味と仕事への帰属意識をますます追求するようになっています。また、仕事と私生活の区別があいまいになっています。McKinseyによると、「被雇用者は信頼、社会的な一体感、目的を強く求めています」。

Qualtricsのレポートは、EXの重要なコンポーネントであるエンゲージメントの上位の推進要因が2020年に劇的に変化したことを示しています。2019年の上位の推進要因は経営陣に対する信頼と学習・能力開発の機会でしたが、2020年には、帰属意識と会社のCSRがそのリストの上位に入りました。

次に、一般的ないくつかのEX KPIを紹介し、ビジネスにおける従業員体験の状態に関してEX KPIが明らかにすることを説明します。

リテンション(定着率)

大量離職により従業員のリテンションが重要なトピックになっています。さらに、新型コロナウイルス感染症により生じた騒動の後、従業員の流動性が一般的な傾向になったため、労働力がさらに混乱する恐れがあります。

従業員のリテンションのKPIを設定する場合は、離職率のみに注目するか、職務にどの程度留まりたいか、言い換えると、退職する意向があるかどうかを従業員に尋ねることができます。

職務に留まりたいという意思から、従業員の実際の去就をどの程度予測できるかについては議論の余地があります。しかし、従業員が退職するつもりである場合は、従業員がその職務や組織から認知的および感情的に切り離されていることは明らかであり、従業員体験の質に関わる問題になる可能性があります。また、すべての離職が望ましくないわけではありません。退職する従業員の数を測定するだけでは、退職した理由は明らかになりません。

生産性

従業員体験がポジティブであれば、生産高と成果が増大する可能性が高くなります。オックスフォード大学サイードビジネススクールが実施したコンタクトセンターの従業員に関する調査では、従業員が満足している場合、生産性が13%高くなることが示されています。つまり、生産性の測定は、EXの促進要因を特定するうえで有用なパズルピースになる可能性があります。

欠勤率

2020年以来、リモートワークが主流として広がったため、欠勤率の特性が変化しています。今では、物理的に存在することは、従業員の優秀さの前提条件ではありません。Bufferが実施した調査では、可能であれば在宅勤務で今後のキャリアを築いていきたいと答えた雇用者は97%にも上っています。

つまり、職場に出勤しているかどうかは、欠勤率を測定するために使用できる二元的な区別ではなくなっています。従業員は、仕事をしているがオフライン、オンラインであるが勤務時間外、または今ではおなじみの「メールに応答するが、Wi-Fiへのアクセスが限定的」という状態である場合があります。

また、特にテクノロジー業界では、無制限の休暇手当を支給する傾向があり、頻繁な欠勤は、警戒すべき兆候ではなく、肯定的または中立的な意味を持っている場合があります。欠勤に対処するのではなく、従業員体験のKPIに関心を寄せている企業は、従業員全員の間で取られた病欠の数を測定することによって、さらに成功する可能性があります。病欠がストレスレベルの高さや貧困な職場文化を反映している場合は特にそうです。

内部昇進

従業員が組織で昇進している場合、従業員は組織に長くとどまるだけでなく、キャリアを伸ばし、専門的なスキルを高めるようになります。内部昇進とは、新しい従業員を採用したり、チームに迎え入れたりするのではなく、「内部の人材を成長」させることを意味します。

この種の目標をKPIの1つとして設定することは、EXのいくつかの領域を反映している場合があるため、こうした目標設定を最大限に活用するには、内部昇進データを、従業員からの質的なフィードバックなど、その他のインサイトと組み合わせることが重要になります。

満足度

多くの場合、仕事の満足度は従業員エンゲージメントと同じ意味で使われますが、同じことを指しているわけではありません。仕事の満足度は従業員が日々の仕事をどの程度楽しんでいるかに関係しますが、従業員エンゲージメントは対象がより幅広く、日々の単調な業務だけでなく、会社の価値観や会社に対する忠誠心など、より大きなトピックに対応しています。Gallupは、エンゲージメントを「雇用者が仕事と職場の両方に関与して熱意を示すこと」と定義しています。

満足度をKPIとして使用すると、物理的な職場、ツールや設備、マネージャや同僚との関係の質といった側面を含む従業員体験の現場に焦点を合わせることができます。従業員の満足度を測定する方法については、従業員が本当に正直に回答できるオンラインアンケートや提案箱など、匿名の手段を検討してください。

心身の健康

心身の健康レベルをKPIとして設定する場合、病欠記録や保険会社が提供する匿名化された健康データをチェックすることもできますが、通常は、アンケートを通じて得られた従業員からの自己申告データを利用します。

心身の健康などの主観的であいまいなことは、具体的な結果に関連付けることが難しいため、有望なKPIではないように思われるかもしれません。しかし、CIOによると、高いレベルの心身の健康を達成すれば、エンゲージメントなど、従業員体験のその他の側面に波及効果をもたらすことができす。

センチメント

従業員は会社で働くことをどのように感じているのでしょうか?従業員の感情を追跡して測定するにはどうすればよいでしょうか?ごく最近まで、非常に個人的なことを標準化されたデータに変換することは不可能だと考えられていました。しかし今は、テクノロジーの力でそれが可能になるかもしれません。

センチメント分析ソフトウェアを使えば、従業員の感情を大規模なエンタープライズレベルの企業にとって価値の高いKPIに変えることができます。機械学習や自然言語処理を使用すると、センチメント分析を通じて、書き言葉と話し言葉を人間同様に解釈することができます。つまり従業員は、マネージャーとの会話で応答を抑制する必要がなくなったり、豊かで複雑な感情を数値スコアに変換したりできるため、どのように感じているかを自分の言葉で表現できるようになります。

センチメント分析テクノロジーはアルゴリズムに基づいているため、従業員の感情を測定する過程でその方法を学習することが可能であり、各従業員に固有の気質から生み出される言葉遣いや微妙な差異に対応できます。

どの指標や方法を使用する場合でも、測定プログラムでは、EXを改善するプロセスから単なる推測が排除されるため、現在と未来に向けて効果的な労働力を構築できるようになります。

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