仕事を楽しくする方法
仕事一色で遊びがなければ、職場は退屈なものになってしまいます。生産性やエンゲージメントが重視されがちですが、仕事を楽しむための環境も必要です。今回は、楽しい職場環境を作ることで組織を発展させる方法をご紹介します。
「楽しい」と「職場」は、普通は相容れない言葉でしょう。しかし、それでいいのでしょうか。私たちは職場で途方もない時間を過ごします。正確には平均で81,396時間です。実に9年以上に相当します。それだけの時間を、クスリとも笑わずに過ごすことを想像してみてください。多少のガス抜きや同僚と笑い合うのをたまにするくらいなら害はない、そう思いませんか。実際、仕事を楽しむことは必要不可欠という意見もあります。
米国の作家で自己啓発の権威であるデール・カーネギーがかつて語った言葉を借りれば、「己の仕事を楽しまずして成功できる人はまずいない」のです。
なぜ仕事を楽しむことが重要なのか
「職場で楽しもうだなんて甘ちゃんだ。『楽しい』はいらないし、余計だ。集中力が削がれるし、重要なタスクから貴重な時間が奪われてしまう」。そう考える上司もいるでしょう。しかし、その見方は短絡的かもしれません。
毎日1分たりとも集中を切らさず働くことを期待するのは合理的ではありませんし、常に緊張しっぱなしで一挙手一投足を見られている職場でベストを尽くせる人は普通はいません。
幸いにも、仕事に楽しさを取り入れれば、もっと前向きな職場環境になり、離職率が下がり、社員の成長を促せる可能性があります。例えば次のようなメリットがあります。
社員がより幸福に、健康になる
出勤して働こうがリモートで働こうが、仕事を楽しめる社員は、ストレスや不安感といった負の影響を受けにくくなります。軽い息抜きを少しでもできれば、孤独感が和らぎ、前向きな気持ちが高まって、社員の心身の健康が驚くほど上向く可能性があります。
おもしろみがなく単調で、楽しい要素が少しもない職場環境では、社員が退屈して意欲を失い、鬱々とした気分にさえなってしまうかもしれません。
生産性が向上する
社員の幸福感や士気が低いと、当然、タスクに対するモチベーションが下がり、どうしてもベストを出せなくなります。反対に、社員の幸福感が高ければ、生産性も、モチベーションも、レジリエンスも向上します。
つまり、楽しいオフィス環境は収益にプラスなのです。Gallupの調査では、働き手のエンゲージメントが高い会社は収益が23%多くなっていました。
コミュニケーションとコラボレーションの質が向上する
コラボレーションは、生産性、クリエイティビティ、イノベーション、パフォーマンスに欠かせません。社員が楽しんでいる場合は、もっと気持ちが通じ合って会話やコラボレーションが深まり、多方面で結果が上向きます。
仕事が楽しければ、組織内の異部署間のコミュニケーションを妨げるものがなくなる可能性もあります。
社員が定着する
仕事を楽しんでいる人は、留まる見込みが高くなります。職場がおもしろくないと、エンゲージメントのない社員が他社に機会を求めて離職率が高くなる可能性があります。
社員の埋め合わせには6~9か月分の給料がかかる場合があるので、定着率が低いのはビジネスに痛手です。離職率が高い場合は、重要なスキルや組織の知識が失われる可能性もあり、そうなれば会社として競争力を得ることがいっそう難しくなります。
社員同士の衝突が減る
一般的に、同僚とは互いに長い時間を過ごします。家族より一緒にいる時間が長くなることもあるでしょう。職場のストレスが強いと、対立が生じたり関係がぎすぎすしたりして、その結果、組織の円滑な運営に大きな支障を来す可能性があります。
雰囲気を和らげることは、対立や深刻な不和が生じるのを防ぐのに役立ちます。「リラックスしていいんだ」「仕事を楽しんでいいんだ」ということをチームメンバーが分かっていれば、一体感と信頼感が高まります。
欠勤率が下がる
英国では、2022年の欠勤日数が過去最多の1億8,560万日を記録しました。会社が社員の幸福と健康を優先すれば、より好ましい職場環境になり、仕事関連のミスや欠勤率が下がります。
クリエイティビティとイノベーションが促進される
人と関わりを持つことは健全な成長に欠かせません。それはほんの幼い頃から同じです。常識にとらわれない思考をするには、もっと子どもに立ち返ることが効果的なのです。幸せホルモンに満ちているチームは、もっとクリエイティブに、もっと広い心で考えられるようになる傾向にあります。
刺激のない職場から新しい発想は生まれませんし、過度な疲れやストレスを感じている状態でクリエイティビティをフルに発揮できる人はいません。
人間関係が強固になる
単なる形だけの同僚や、もっと言えば折り合いの悪い人よりも、仲のいい人とのほうが協力するのは簡単ですし、楽しくもあります。一緒に楽しい時間を過ごすことは、互いのことをよく知り、相手が何をすれば動いてくれるのかを理解するのに非常に効果的です。
「友情が育まれる文化」があれば、仕事満足度や仲間意識の向上が期待できます。実際、職場に親友がいる女性社員のほうが、そうした存在がいない女性社員よりも、仕事に意欲的になる可能性が2倍高いというGallupの調査結果があります。
Workplaceで業務を簡素化
オフィス勤務再開の周知からハイブリッドワークの導入まで、Workplaceは業務を簡素化します。
仕事環境が楽しいと、どんなメリットがあるのか
仕事を楽しむことのメリットは、英国で実施された「Great Place to Work (理想の職場)」調査によって裏付けられています。
この調査では、労働者の心身の健康を作る最大の要因は楽しむことであることが明らかになりました。仕事を楽しんでいる被雇用者は、心身の健康レベルが高い可能性が190%~220%も高くなっていたのです。しかも、興味深いことに全世代で同様の傾向が見られました。
Harvard Business Reviewの記事でも、興味深い発見がいくつか取り上げられています。「100 Best Places to Work For (理想の職場TOP100)」リストに申請した企業に対して、社員レコグニションの専門家、Bob Nelson氏が行った調査に基づくものです。
この調査では、リストにランクインした組織の社員の81%が、オフィス環境が楽しいと回答していたそうです。しかし、申請したもののリスト入りを果たせなかった会社では、この割合が62%にまで落ちていました。この19%という差を見れば、日常において遊びとユーモアがいかに重要かは明白でしょう。
TOP100に入った職場は、生産性、定着率、採用を含むさまざまな重要業績評価指標で平均的な企業を上回っています。
楽しい職場環境を作るには
第一に、何を楽しいと感じるかは人によって大きく異なる可能性があることを意識することが重要です。チームメンバーは皆、1人の人間であり、性格も違えば興味の方向も違うので、チームアクティビティを計画するときにはその点を考慮する必要があります。
もっと重要なのは、「楽しい」は無理強いできない点です。「気の進まないアクティビティでも参加しなければ」と、メンバーがプレッシャーを感じることのないようにしましょう。
楽しい職場文化を作る方法のアイデアを以下にいくつか紹介します。
ゲームをする
ゲームやコンテストは、プレッシャーを和らげ、日々のストレスから一旦離れるのに効果的です。例えば、オフィスでのビンゴ大会、宝探し、お菓子作りコンテストなどはどうでしょうか。
リモートチームがいる場合は、対面しなくてもできるクイズやファンタジースポーツ、オンライン脱出ゲームなどが考えられます。
タスクをゲーム化する
チームで大きなプロジェクトを抱えている場合は、タスクを細分化して番号を振り、それぞれのタスクを完了した人に景品を用意してみましょう。いつもより30分早く退勤するなどのごく簡単なタスクでも、従業員が「評価されている」と感じることができ、雰囲気も和らぎます。
チームで出かける
チームでの交流は、仕事外で関係を強固なものにするのに最も効果的な方法の1つです。チームランチやボウリングなど、普段よりもリラックスした環境で過ごせば、仕事でのチームワークやコラボレーションの強化を促すことができます。
社員がマネージャの違った側面を見る機会にもなります。そうすれば、マネージャに対して人間味や親しみやすさをより感じてもらうことができます。
チームビルディングアクティビティに参加する
ミーティング時のアイスブレイクや仕事を離れてのアクティビティといったチームビルディング活動は、一体感を強めるのに役立つことがあります。
中にはオンラインでできる楽しいチームビルディングアクティビティもあるので、リモートワーカーが蚊帳の外に置かれる心配はありません。例えば、オンライン謎解きゲームや仕事関連のジレンマの解決などさまざまなものがあります。オンラインゲームの利点は手短な点です。せいぜい15分で終わるので、ほとんど時間を使わずに済みます。
友情が生まれるよう促す
職場に親友がいる人は10人に3人しかいないので、チームメンバー間の友情を育むようにするとプラスに働く可能性があります。
対面でもオンラインでも接触の機会を増やしましょう。例えばVRを使えば、互いに遠く離れていてもまるで同じ部屋に一緒にいるかのような感覚を作り出すことができます。また、特に新入社員向けにバディ制度を設けることを考えましょう。そのようにして最初にできたつながりは、生涯にわたる関係にさえなるかもしれません。
成果を認める
社員の日々の貢献や大きな成果に対して忘れずに感謝を伝えましょう。例えば、「特定の問題を解決した」「個人的な課題を克服した」などに対してです。全社チャットで大きく取り上げてほめたり、個人的にメッセージで「ありがとう」を伝えたりしましょう。
あるいは、趣味や好物などについてあらかじめ尋ねておくのもよい考えです。その情報をもとに、ハードワークをねぎらうときや勤続祝いをするときにその人にとって意味のあるリワードをサプライズで渡してみましょう。
趣味を奨励する
ほとんどの人は仕事以外に趣味があるので、楽しい職場文化を作る方法を考えるときは、趣味に使えるまとまった時間を毎月与えることを検討してみてください。
強制参加の飲み会や、ゲームや遊び道具がそろったオフィス内の遊び場などは過去の産物でしょうが、時々のリラックスできる時間は今も変わらず重要です。ただし、従業員が本当に求めているものをきちんと尋ねるようにしましょう。