男女間の賃金格差とそれを解消するための9つの方法

男女間の賃金格差はなぜ存在するでしょう。この格差は現在、縮まっているのでしょうか。解消に向けて組織としてできることについても考えます。

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男女間の賃金格差の定義

男女間の賃金格差の定義

男女間の賃金格差とは、男女の税引前賃金を1時間当たりに換算した平均額の差のことです。通常はパーセントで表されます。

「調整済み男女間賃金格差」は、その差から教育レベルや職歴などの構造的要因を排除した後の値です。

では、どれほどの差があるのでしょうか。Forbesが2022年時点での差を世界中で調べたところ、男女間の格差は17%でした。ただ、格差の幅は、業界や人種、さらには地域によって異なります。しかも、役職、勤続年数、勤務時間を考慮して調整した後でさえ、女性の賃金は依然として男性より11%少なくなっていました。

この格差の影響は、女性の手取り賃金だけでなく、女性の全体的な潜在的稼得能力、長期的な経済的安定性、退職給付にも及びます。Forbesの調査では、退職基金への拠出額は女性のほうが30%少なく、受け取る社会保障給付も20%少なくなっていました。

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男女間の賃金格差はなぜ存在するのか

男女間の賃金格差はなぜ存在するのか

男女間の賃金格差にはいくつかの要因があることが分かっています。

職務

コロナ禍下では全世界で就業者の数が減りましたが、減少幅は女性のほうが大きくなっていました。例えば米国では、女性の失業件数が1,190万件だったのに対し、男性は1,010万件でした。そして最も大きな影響を受けたのは、ホスピタリティ、小売り、旅行など、女性就業者の多い業界でした。

また、残業やシフトの追加を選ぶ女性が男性より少ない現状があります。家事や子育てを理由にパートタイムを選ぶ可能性が高いのも女性です。上級職を引き受けるのが難しいのも同じ理由かもしれません。確かにこれは男女間の賃金格差を生む要因ではありますが、格差がほぼすべての業界に存在することの説明にはなりません。

Forbesによれば、求人市場のエントリーレベルでの男女間の賃金格差は、全業種で18%を超えています。エンジニアリングやテクノロジーなど高賃金の業種では格差がさらに顕著で、反対に物理学・社会科学の職では格差が小さくなっていました(9%)。格差が最も大きかったのは法曹界(59%)で、次いで建設・保守(40%)、マネジメント職・専門職(34%)でした。

「母親ペナルティ」の存在

男女間の賃金格差は、女性の子どもの人数が増えるにつれて広がっていきます。この理由としては、女性が勤務時間を減らさざるを得なくなることや、家事と両立しやすいが低賃金になりがちな仕事を選ぶことなどが考えられます。

英国政府の報告書によれば、子どもが生まれた後に昇進を提示される可能性は、女性のほうが男性よりも低くなっています。また、子どもが生まれてから3年後の時点でフルタイムの職についている女性はわずか44%なのに対し、新たに父親になった男性ではこの割合が90%であることが示されています。

理解の不足と復職プログラムの不足、手ごろな保育サービスの不足、女性(特に子どもがいる女性)を雇うことに対する純粋な偏見、これらもろもろが、このような状況を生み出しているのです。その結果、女性の多くが「キャリアの天井」を経験し、それがキャリアアップにも悪影響を及ぼし、中間職や上級職での男女間の賃金格差をさらに広げています。

パートタイムとインフォーマルな仕事

こうした社会的な役割を担っているために、子どもが生まれた後を含め、キャリアのどこかでパートタイムに移行するのは女性のほうが極端に多くなっています。大卒者での賃金格差の3分の2は、こうしたキャリアにおける男女間での経験差で説明できるかもしれない、と英国のInstitute for Fiscal Studiesは述べています。

世界的に見て、インフォーマルで不安定な仕事(クリーニング、織物、福祉)などでは、依然として女性が断然多い状況です。こうした仕事の多くは労働環境が劣悪で、医療サービスや有給休暇、産前産後休暇などの福利厚生も提供されていません。このために、女性の収入は減り、キャリアアップの機会が制限されることになります。

地域

男女間の賃金格差には地域的な要因も影響しています。部分的には、各国・各地域の経済や労働市場の差で説明が付きます。特定の業界に女性が集中していることと、パートタイム、非正規雇用、季節労働(観光業や農業など)が存在することも、この統計値に影響することがあります。ただ、程度の差こそあれ、男女間の賃金格差が普遍的に存在する事実は変わりません。

ポストコロナの西洋の工業化社会では、通勤距離の影響が引き続き見られます。英国政府の報告書によれば、長距離通勤が必要な仕事を離れ、より自宅に近い低賃金の仕事を選ぶのは、女性のほうが30%多いのが現状です。それに対して男性のほうが、高給な職に就くために通勤に前向きな傾向があります。

民族

研究によれば、男女間の賃金格差によって女性が被る影響は民族ごとに異なります。ラテン系、黒人系、およびネイティブアメリカン系の女性では、全女性の平均値よりも男性との賃金格差が大きくなっています。2021年時点での男女間の賃金格差は、ラテン系で54%でした。また男性の収入に対する女性の収入の割合は、黒人系で58%、ネイティブアメリカン系で60%でした。

差別

仕事の世界には、依然として性別に基づく固定観念と社会規範がはびこっています。

女性に適した役割や仕事を決めつける風潮があり、それらは得てして賃金が低くなっています。

そのうえ、雇用主は、採用や昇進の判断をするときにこれまでの経歴を重視する傾向にあります。これは、出産や、ワークライフバランスに適した仕事に専念するなどして女性のキャリアに中断が生じる社会で、男女間の賃金格差を存続させる原因になっています。

女性にトレーニングの機会が与えられにくくなっている問題もあります。「女性はいずれ出産や育児などで休業する時がくるだろう」「出産後は一定のレベル以上には進めないだろう」という認識が、女性のキャリアへの投資に影響しているのです。これに追い打ちをかけるように、女性の復職者に対する備えも十分ではありません。

職場における男女差別は、ここしばらく多くの国の雇用法で大きなテーマになっています。2023年4月には、EUの欧州理事会が、賃金差別撲滅と男女間賃金格差の縮小に向けた新しい規則を採択しました。この規則の下では、EU諸国は同一の役職の男女に支払っている賃金の情報を共有し、賃金格差が5%を超えている場合には行動を起こさなくてはならないことになっています。米国の1963年の同一賃金法は、性別に基づく賃金差別をしてはならいないと定めています。

男女差別や賃金格差に関する取り組みと認識は拡大しています。とはいえ、格差が解消するまでにはまだ長い道のりがあります。世界経済フォーラムによれば、現在のペースでは全世界での完全な格差解消まであと132年もかかってしまうそうです。

職場における国別の賃金格差

職場における国別の賃金格差

ヨーロッパ

欧州議会によれば、EU全域における男女間賃金格差の平均値は2021年時点で12.7%でしたが、数値は国によってかなり開きがあります。

最大値はエストニア(20.5%)で、オーストリア(18.8%)、ドイツ(17.6%)と続きます。最も小さいのはルーマニア(3.6%)で、その次はスロベニア(3.8%)、そしてイタリアとベルギーが同率(5%)です。ルクセンブルクについては、すでに男女間の賃金格差が完全に解消されたと報告されています。

米国

Pew Research Centreによれば、男女間の賃金格差はこの20年間ほぼ横ばいです。ただし、格差が縮まっている兆候は見られます。現在の格差の推計値は全年齢の労働者で18セントであり、1982年の35セントから小さくなっています。

英国

英国では、The Guardian紙の分析によれば、男女間の賃金格差はまだ顕著に存在しています。同紙の調べでは、英国では5社のうち4社で男女の従業員に支払われる賃金に依然として差があります。現在の格差は9.4%で、これは2017~18年から変わっていません。

男女間の賃金格差を解消する方法

男女間の賃金格差を解消する方法

賃金格差が生じている理由は複雑で、格差解消の特効薬はありません。それでも、格差解消に向けてビジネスとしてできることは数多くあります。

1. 透明性を確保する

多くの国では、性別ごとの給与を開示することが法律で義務付けられています。たとえ義務付けられていない場合でも、給与と福利厚生がどのように決まるのかについてオープンにするポリシーを持つことが鍵になります。昇級と昇進についても同様です。

2. 女性の昇進をサポートする

昇進ルートを全社員に周知するようにします。また、すべての機会が平等なだけでなく公平なものになるようにします。個々人の状況(特に女性ならではの状況)や、役職、スキルに配慮した機会を提供しましょう。

3. 交渉を奨励する

あらゆる社員、特に女性社員からの交渉に対してオープンになり、格差解消に必要な場合には変更と賃上げを受け入れる準備をしましょう。

4. 採用と給与パッケージを確認する

女性の復職者や、社会や家庭で責任を担っている人に平等な機会を与える採用ポリシーを取り入れましょう。

5. 子育てを担っている人を支援する

保育所、学童、子育て支援のほか、休みを柔軟に受け入れる体制があると、女性社員の助けになります。また、優秀な人材を引き留めることができます。

6.男性にもっと責任を担うように促す

男性育休や男女問わず取得できる育休についてポリシーで定めておくと、男女に平等に開かれた職場であることを示せます。男性に育児を分担するように促せば、女性が男性と並んで昇進することが可能になります。

7.リーダー職へのパスを確認する

女性があらゆる機会を平等に利用できるようにし、また、その実現に向けて職務や業務を変更する準備を整えてください。女性向けの効果的な復職スキームや、職場を一時的に離れていた女性のための特別なキャリアパスも設けましょう。

8. リモートワークとハイブリッドワークを推進する

柔軟な勤務形態は、男女が同じ土俵で働けるようにするのに役立ちます。これにより、職場と家庭の責任のバランスを取るための余地が全社員に平等に与えられます。

9. 研修に組み込む

ダイバーシティとインクルージョンの研修や、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)対策プログラムは、女性にとっての昇進機会や研修機会の欠如、および男女間の賃金格差の要因となっている、差別意識の解消に役立ちます。

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