社員エンゲージメントとは何か、なぜそれが組織にとって極めて大切なのか

社員エンゲージメントを向上させる主な要因と、エンゲージメントが低下している社員を見つける方法をご紹介します。

社員エンゲージメント | 所要時間: 8分
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チームのメンバーに頼ることができるのは、メンバーが毎日出勤してくれるからに他なりません。しかし、メンバーの仕事は、おざなりになっていないでしょうか。それとも、心も頭も仕事に向かっていて、持てる能力をすべて出しているでしょうか。

社員のエンゲージメントを獲得するのはビジネスの成功に欠かせませんが、それは一筋縄では行きません。とりわけ、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって仕事の環境が崩れ、リモートで働く人が増えた今となっては、なおさらです。この記事では、エンゲージメントについて詳しく見ていきます。なぜエンゲージメントは重要なのでしょう。そして、それを獲得するにはどうすればよいのでしょうか。

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社員エンゲージメントとは?

社員エンゲージメントとは?

よく耳にする言葉ではありますが、意外にも、社員エンゲージメントの意味をはっきりと定義することは簡単ではありません。社員が幸福な状態のことを言うのでしょうか。社員が求められている以上に働いてくれる状態のことでしょうか。それとも、忠誠心やコミットメント、熱意があるという意味でしょうか。実は、これらをすべて足し合わせ、さらに他の要素を少し加えたものが、エンゲージメントなのです。

人事のエキスパートであるSage Peopleは、社員エンゲージメントとは「基本的なこと以上の仕事をし」、「より深いレベルでつながっていること」であると述べています。Gallupは、エンゲージしている社員とは「自分の仕事と職場に関わり、それらに熱意を持ち、コミットしている人」と定義しています。それに対してCIPDは、関係性に焦点を当て、社員エンゲージメントとは「組織とその価値観へのコミットメントと、同僚に手を差し伸べる意欲を足し合わせたもの」であると説明しています。

ただ毎日出勤して仕事をしているだけの状態は、社員がエンゲージしているとは言いません。エンゲージメントとは、仕事や、ともに作業をする人、さらには組織自体とより深いつながりを持っている状態のことです。社員エンゲージメントの測定は必ずしも簡単ではありません。それはエンゲージメントの獲得についても言えます。Gallupの2019年の調査では、エンゲージできていると感じている米国の労働者はわずか35%に留まっていました。しかも、2000年の調査開始以来、最高の数字でこれなのです。

社員エンゲージメントと社員満足度の違い

社員エンゲージメントと社員満足度の違い

仕事での満足度はエンゲージメント向上に資することがあるという文献もありますが、必ずしもそうとは限りません。Society for Human Resource Managementが行った満足度と社員エンゲージメントに関する調査によると、調査対象者の88%が満足していると回答したにもかかわらず、彼らのエンゲージメントは高くも低くもありませんでした。

つまり、社員エンゲージメントと満足度はイコールではないのです。満足は「不満がない状態」と考えてください。満足している社員は、自分の仕事に対して不満はなく、自分がこなせる仕事であると感じています。給与と勤務環境にもまずまず満足しています。特段、問題はありません。しかし、挑戦心や意欲、献身的な姿勢が欠けています。時間は費やしますが、仕事、同僚、組織に対して積極的には関わっていません。このような姿勢はパフォーマンスに響きます。不満はないのかもしれませんが、不満がある社員と比べて高い成果を上げようという意欲は必ずしも持ち合わせていません。これは、生産性やイノベーションに影響しかねません。

エンゲージメントと満足度に確たる関係がないとすれば、幸福度とは何か関係があるのでしょうか。たしかに、仕事に対する満足度と同じように幸福度もエンゲージメント向上に寄与しない、という主張もあります。これは裏を返せば、幸福ではないが仕事には深く打ち込めていると感じている社員も存在しうることになります。しかし、幸福度とエンゲージメントの相関を調べた研究によれば、幸福な社員はエンゲージしている可能性が高いといいます。『Employee Engagement 2.0』の著者であるKevin Druse氏は、「職場におけるエンゲージメントは幸福と同義ではありませんが、幸福な状態を達成するにはエンゲージメントが必要です」と述べています。つまり、エンゲージメントを達成する方法を探るにあたり、幸福を抜きに考えることはできません。

社員エンゲージメントが重要である理由

社員エンゲージメントが重要である理由

社員エンゲージメントが重要なのは、業績や生産性から、社員定着率や組織の評判に至るまで、組織の重要領域に影響するからです。

社員エンゲージメントと生産性

ある調査によると、生産性の低下や停滞が問題になっている英国などの一部の国では、生産的な時間が週に30時間未満と回答した労働者の割合が3分の1を超えていました。社員エンゲージメントは生産性にほとんど魔法のような効果をもたらし、これを最大で21%も押し上げます。言うまでもなく、これは収益に大きなインパクトを与えます。

では、エンゲージしている労働者はなぜそれほどまでに生産性が高いのでしょうか。ある説によるとその理由は、「自発的な努力」が多いことです。つまり、そうした社員は、求められている以上の努力をすることを厭わず、期待されていないことさえもこなし、作業の完了や期限の遵守などのためなら普段以上に働くというわけです。エンゲージしている社員の82%は責務以上のことをする、とSodexoの「Move, Mould, Motivate」レポートでは報告されています。

社員定着率の向上

社員がエンゲージしている場合には社員離職率が最大で59%も低下するという調査があります1。これはすなわち、労働力が安定し、そのうえ生産性が向上することを意味します。加えて、エンゲージしている社員は組織の熱烈な支持者にもなり得ます。そうした社員は、今の会社が良い職場であると他人に勧める可能性が9倍も高く、社員に選ばれている職場であるという評判を築くのに一役買っています。

この効果は見過ごせません。というのも、人の入れ替えには多額のコストが発生するからです。米国の場合、社員の入れ替えコストは6~12か月分の給与に相当するという試算があります。英国では、このコストは最大で3万ポンドに達します。

問題は金銭面だけではありません。離職者が出ると、チームに乱れが生じ、士気が下がります。ナレッジが流出することもあります。求人、雇用、教育の必要が生じ、離職率の高さに応じてこのプロセスをいつまでも繰り返さなければなりません。新規の雇用者が仕事を覚えるまでには時間がかかり、そのために肝心の生産性に影響が出てしまいます。

離職のリスクは侮れません。ある人材紹介会社の調査によると、英国で働く社員の半数以上が転職を考えています。とりわけミレニアル世代は転職志向が高く、2年以内に転職したいと答えた人は49%に上ります。なおのこと、社員エンゲージメントを優先しなければなりません。

アブセンティーイズムの抑制

エンゲージしていない社員は、予定外の欠勤を繰り返します。チームの他のメンバーは穴埋めを強いられ、エンゲージメントや士気を削がれ、業務の負担が増します。そのため、さらに多くの社員がエンゲージメントを失い、突発的な欠勤が増えていきます。エンゲージメントに関して、アブセンティーイズムは悪循環を生みかねず、そのうえ財政的にも痛手になります。病欠に伴う生産性の損失は年間数十億ドルに及びます。社員の健康増進を含め、社員のエンゲージメントを獲得することは不可欠です。調査によると、エンゲージしている社員はパフォーマンスが高く、病欠も少ないことがわかっています。

カスタマーサービスの向上

正真正銘エンゲージしている社員の熱意とコミットメントは、仕事のあらゆる面に表れます。これには顧客対応も含まれます。そうした社員は、顧客との良好な関係や優れた顧客体験を築いて自社を推薦してもらう可能性を高めるために、よりいっそうの努力をする意欲があります。加えて、顧客体験をさらに改善するアイデアを提案する可能性も高くなっています。これらはすべて、企業の収益を押し上げる要素です。

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社員エンゲージメントを高める要因

社員エンゲージメントを高める要因

社員エンゲージメントのモデルにはさまざまなものがあります。自発的な努力や生産性の向上といった結果に注目するものもあれば、心理的な状態に重きを置くものもあります。どのような捉え方をするにせよ、エンゲージメント向上のために職場のどういった領域に重点的に取り組むべきかは、調査によって明らかになっています。

文化

自分の価値観と調和する組織文化を求める人がますます増えています。とりわけミレニアル世代は、何らかの目的意識を持ち、CSR(企業の社会的責任)の価値観が自分の価値観と一致する企業での職を探しています。ビジネスリーダーはエンゲージメントを得るために文化が重要であることは認識していますが、文化を築くことは大きな難題であるとも感じています。はじめにすべきは組織文化の定義付けです。組織のミッションと価値観は何か?リーダーはそれらを実践しているか?社員はそれらを理解しているか?ただし、上辺だけにならないように注意してください。行動に嘘があれば社員に見抜かれます。実際、金融サービス業界で働くミレニアル世代の68%は、企業は多様性をうたっているかもしれないが機会が平等でないと回答しています。

健康

社員の身体的、心理的、対人的、精神的な健康は、社員エンゲージメントと密接な関係があります。健康状態が良好であると感じている人は、健康状態が悪いと感じている人よりも組織との結び付きが強くなっています。これは理にかなっています。燃え尽きた状態にあり、大きな負荷が掛かっていて、厳密な勤務パターンをこなせない社員が、エンゲージメントを保つのは難しいでしょう。また、仕事で身体的な苦痛を感じている場合も意欲的に働くことはできません。英国企業では、筋骨格系の疾患を原因とする欠勤日数が年間2,820万日に上ると試算されています。

自己決定権

自己決定権はエンゲージメントとの好循環を生みます。エンゲージしている社員は、仕事の進め方について選択権と裁量権があると感じており、自己決定権のある社員の79%は、自己決定権のない社員よりも仕事に意欲的です。しかし、どの程度個人に任せ、どの程度サポートするのが良いバランスなのでしょうか。マイクロマネジメントは、エンゲージメントを大きく低下させます。常に誰かに監視されている状態ほど、信頼関係を損なうものはありません。反対に、マネージャがリモート勤務で連絡を取りにくく、指導やフィードバックがまったくないか、めったにない場合も、エンゲージメントを損ないます。社員は自律的に働ける環境を必要としている一方で、(自分もその設定に関与した)明確な目標も必要としており、パフォーマンスに対するフィードバックも求めています。また、サポートが必要なときに誰に連絡すればよいかも知っておく必要があります。

リモート勤務やハイブリッド勤務がますます当たり前になるなかで、それによって生じる自律性と柔軟性の増加がエンゲージメント向上につながり得るというのは、嬉しい知らせです。ただ、リモート勤務社員のエンゲージメントに関しては、どの程度社員を信頼して自律的に働かせ、マネージャや同僚とのつながりを保つのに必要なツールをどの程度与えればよいか、そのバランスを見極めることが重要になります。

オープンであること

マネジメントの透明化には絶大な効果があります。社員の幸福度に最も大きく寄与する要素とする調査もあるほどです。また、オープンにして透明性を確保することには2つのメリットがあります。社員が組織にエンゲージするには、社内で何が起きているのかを知る必要があります。それと同時に、組織横断的に自分の声を届け、自分が尊重されていると実感することも必要です。社内をオープンにして透明性を確保することにより、この両者を満たす環境が整います。

コミュニケーション

コミュニケーションは、エンゲージメントを高める要素をすべてつなぐ要です。オープンなチャネルと応答性の高いツールがあれば、組織は、大切にしている価値観や健康に関するガイダンス、企業情報を共有できます。これらはどれもリモート社員のエンゲージメントを獲得するうえで特に重要です。こうしたツールがあれば、リモート社員であっても目標に貢献し、サポートを利用し、フィードバックを得ることが可能になります。

社員エンゲージメントの低下を示す兆候

社員エンゲージメントの低下を示す兆候

エンゲージメントに関して社員が2つのグループに分かれることは容易に想像できます。すなわち、熱意があり、献身的で、意欲的なグループと、不満を抱え、疎外感を覚えている消極的なグループです。ほとんどの人はこの中間にいます。Gallupによると、社員の52%は単にエンゲージメントを失っています。毎日出勤して最低限の貢献をしながら、転職先を探している状態です。とはいえ、積極的に組織に敵対しているわけではありません。

もう1つ注意したいのは、エンゲージメントは組織内で一様ではない点です。研究によると、職位、職務、勤続年数のすべてがエンゲージメントに影響し得ます。社歴の長い社員はエンゲージしている可能性が高い傾向にありますが、エンゲージメントは、入社から2~3年を境に低下することがあります。また、挑戦しがいのある職務ほどエンゲージメントが高くなる傾向があります。

エンゲージメント低下の兆候のなかには明白なものもあります。例えば、組織に反感を持っている社員が不満を抱いていることは明らかでしょう。その一方で、それほど明確ではない兆候もあります。特にリモート社員のエンゲージメントはそうです。とはいえ、エンゲージメントの向上は組織に大きな価値をもたらす可能性があるので、問題の発生を知らせる兆候を見つけ、それに対処することが極めて重要になります。注意すべき兆候を以下にいくつか挙げます。

パフォーマンスが低下している

パフォーマンスは時間をかけて低下するので、気付くのは必ずしも簡単ではありません。社員がエンゲージメントを失うと、納期を守れなくなったり、アウトプットが落ちたり、あるいは仕事の質が下がったりします。きちんと監督し、頻繁に状況を確認すれば、マネージャは適切な質問をして問題を防ぐことができます。もしかするとパフォーマンスが落ちているのは、現在の仕事が自分には力不足だと感じているために苦労しているか、あるいは仕事に張り合いがなく単に退屈しているだけの可能性もあります。

勤務パターンが健康的でない

エンゲージしている社員が予定外の欠勤をする可能性が低いことはわかっています。しかし、エンゲージメント低下の兆候は欠勤だけではありません。プレゼンティーイズム(体調不良にもかかわらず働くこと)とリービズム(休むべきときに働くこと)も、エンゲージメントが期待を下回っている兆候である可能性があります。しかも、この2つは決して珍しいことではありません。CIPDが2020年に行った職場での健康と福祉に関する調査では、プレゼンティーイズムの事例を見かけたことがある人は89%、リービズムの事例を見かけたことがある人は73%に上っています。手に負えないほどの負荷がかかっていないか、融通がきかないポリシーによって健全なワークライフバランスが妨げられていないかに注意しましょう。

社交的でなくなった

普段からウォータークーラーやオンラインでの雑談に加わっていた人を見かけなくなったら、それは仕事や組織へのエンゲージメント低下の兆候である可能性があります。あるいは個人的な悩みや、ともすると職場いじめの可能性もあるので、マネージャは結論を急がずによく考えて質問をすることをおすすめします。もう1つ、電話会議やミーティングへの参加が減った人にも注意しましょう。それは、その人が話し合いから疎外されているか、自信を喪失したことの表れかもしれません。

同僚の成果を貶めている

これを行う可能性が高いのは、組織に反感を抱いている社員のうち、その程度が特に大きい人です。こうした社員は職場で不満を抱え、単に努力を怠るだけでは飽き足らず、他人の努力や、多くの場合、組織自体をけなします。これは士気に大きな損害をもたらすため、組織はこの問題に直接対処する必要があります。

他人との連携がうまく行っていない

チームワークが悪く、同僚にきつく当たっているのは、エンゲージメント低下の兆候である可能性があります。こうした行動は職場に悪影響をもたらす対立を生みかねず、マネージャによる対応が必要になります。

最低限の仕事しかしない

エンゲージメントが高い場合は自発的な努力をする可能性が高くなりますが、エンゲージメントが低下すると、それがいかに同僚の助けになるとしても、求められている以上の努力をする意欲がなくなります。効率がよく生産的な社員は、たいてい自分の仕事量を管理できていて、その結果ワークライフバランスを保つことができています。しかし、これはエンゲージメントが低下している兆候の可能性もあります。単に意欲を失った人は、決められた時間だけ働き、それ以上のことをしなくなります。組織に反感を抱いている社員は、遅刻や早退を頻繁に繰り返す可能性が高くなります。

研修や学習に関心を示さなくなる

エンゲージメントを失った社員は、新たな挑戦をしなくなったり、将来が見えないために新たなスキルの習得や昇進の機会を拒否したりする可能性があります。組織が何をしてもそうした社員の関心に火をつけられない場合は、互いに別々の道を歩む時かもしれません。

社員エンゲージメントを高める方法

社員エンゲージメントを高める方法

社員エンゲージメントに関する取り組みは、マクロとミクロの両面から行います。戦略寄りのレベルで社員エンゲージメントにマクロからアプローチする取り組みとしては、ダイバーシティとインクルージョンに関するポリシーや、組織のビジョンと価値観の定義などがあります。社員エンゲージメントに関する戦略を別個に立てて、目標とKPIを定め、エンゲージメント向上のために優先的に取り組む領域を決めることもおすすめです。

戦術に近いレベルでの社員エンゲージメント向上の取り組みは、日々の活動の積み重ねです。マネージャは、会社の価値観を行動で示す、ベストプラクティスを共有する、双方向のコミュニケーションを続ける、チームメンバーのエンゲージメントを高めるためにできることに目を向ける、といったことが必要です。

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