協働型リーダーシップとは何か、それによってどうチームをまとめるのか

協働型のリーダーは多様なチームをまとめ、組織の目標達成や問題の解決、情報共有を行います。しかし、リーダーがより協働的になるには、何が必要でしょうか?この記事で見ていきましょう。

リーダーシップ | 所要時間: 7分
collaborative leadership - Workplace from Meta

私たちはしばしば、ビジネスを主導するのは独自の考えをもつ人、つまり成功を実現するために大胆な決断を下す起業家であると考えます。しかし現在の多くの企業で、この考えがあてはまらなくなっています。リモートチームやフラットな企業構造が取り入れられている世界では、リーダーシップ のスタイルが進化しています。

協働型リーダーシップとは何か

協働型リーダーシップとは何か

協働型のリーダーは、多様なチームの力を引き出し、高めることで組織の目標を達成しようとします。問題解決において、協働型のリーダーはさまざまな部署のメンバーを管理して、チームが幅広い知識やスキル、経験を活用し、うまく協力し合うようサポートします。

これは従来のトップダウン型の組織の仕組みとはまったく異なるアプローチです。厳格なヒエラルキーに基づく組織は、重要なプロセスにさまざまな社員を参加させるのではなく、情報をため込み、意思決定を上級幹部に限定してしまうことがあります。このような企業では、上司から部下にタスクが割り振られるため、部下がフィードバックを提供したり、判断力を発揮したりする機会はほとんどありません。

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これに対して、協働型の環境では、このような部署間の壁を取り払い、組織全員の潜在能力を引き出すことに焦点を当てています。

協働型リーダーシップは最近少し退潮気味です。独自の調査によると、新型コロナウイルス感染症の世界的流行が始まって以来、大きな決断を下す機会を得たフロントラインのマネージャーが14%減少したことがわかっていますが、大きな決断を下す機会は全員に与えられるべきです。理由は次のとおりです。

さまざまなタイプの協働型リーダーシップ

さまざまなタイプの協働型リーダーシップ

協働型リーダーシップには、いくつかのレベルがあります。

タスクおよびプロジェクトにおける協働型リーダーシップ

タスクおよびプロジェクトにおける協働型リーダーシップ

組織において異なる部署のチームが合同でタスクに取り組む場合、プロジェクトマネージャーが指揮を執ることが多くあります。一方、協働型のチームでは、グループ全体で目的や目標を決定するため、状況が少し異なります。多様な意見を最も高いレベルかつ、できる限り早い段階から取り入れることで、チームの影響力が高まり、生み出す成果を向上させることができるのです。

例えば、CEOから新製品をリリースするよう指示があった場合、シニアマネージャーがその製品の機能、小売価格、USPについて考えをまとめ、部署横断チームを編成して細かいディテールを詰めていきます。

では次に、CEOが部署横断チームに新製品リリースの実現可能性について議論するよう指示した場合を想像してみてください。このような早い段階でフロントラインのスタッフの声に耳を傾けることで、より効果的なプロジェクトの構築につながる知見が得られるかもしれません。まったく別のソリューションが誕生することすらあり得るでしょう。もしかしたら、必要なのは新製品ではなく、ソフトウェアのアップデートや顧客への追加サポートで製品価値を大きく向上できるという結論になるかもしれません。

事業経営における協働型リーダーシップ

事業経営における協働型リーダーシップ

より重大な意思決定に、協働型リーダーシップを取り入れている企業もあります。先進的な組織では、従来のトップダウン型モデルのようにCEOがコントロールするのではなく、複数の部署のスキル、知識、経験を可能な限り活用します。つまり、特定のシナリオにおいて多様なチームを編成したり、重大な意思決定を行う際は必ず複数部署のリーダーを招集したりします。

American Expressのレポートによると、ミレニアル世代の3分の1が10年以内に「CEOの役割は、現在の形式では意味をなさなくなる」と考えています。デロイト社の調査に回答した85%が、経営幹部の協働を「重要」または「非常に重要」と評価しました。

リーダーがその意義を保つためには、従業員の前に姿を現す機会を増やし、親しみやすい態度をとり、従来のヒエラルキーにとらわれない協働を重視することが必要だと考えられています。

このような考え方は、すでに「symphonic C-suite」という新しい言葉を生み出しました。これは、CEO、CFO、COOらが、「専門家が調和して演奏する交響曲のような、経営幹部のチームワーク」を発揮するという意味です。つまり、チームを構成するメンバー同士が互いをリードするイメージです。

協働型リーダーシップが重要である理由

協働型リーダーシップが重要である理由

協働型リーダーシップは、ビジネスの成功につながります。理由は次のとおりです。

  • 部署の壁を越える

    TEAMとは、「Together Everyone Achieves More (全員で協力すればよりよい成果を達成できる)」の頭文字をとったものです。協働型の環境は、このフレーズが正しいことを証明しています。適切なリーダーたちが指揮を執ることで、従業員は安心して自分の意見を共有できます。そしてそれがより良い結果につながるのです。

  • クリエイティビティを促進

    異なる部署からのアイデアが流れ込むと、意見の対立が生じる可能性も高くなります。協働型モデルでは、これは必ずしも悪いことではありません。チーム同士が、互いを尊重しながら難しい問題について話し合いを進めた場合、創造的な緊張感が最高のソリューションを生み出すことが多くあります。

  • 社員をサポート

    部署横断チームに協働の機会を与えることは、関係者全員にメリットをもたらします。チームの一人ひとりが、重要な決定をする際に周囲のサポートを得ることができるとともに、創造的に考えて問題を解決することが奨励されるため自信を深めることができます。

  • エンゲージメントを促進

    Gallupによると、エンゲージメントの高いチームは、そうでないチームに比べて生産性が17%高く、利益率は21%高くなります。エンゲージメントを高める方法の一つとして、自分の仕事に対する当事者意識を持たせることが挙げられます。協働型リーダーは、目標や目的を決める際に社員に発言権を与えます。そのため社員は、自分の仕事やそのプロセスに意欲的に取り組むようになります。

    優れたマネージャーはさらに、それぞれのチームメンバーに対して時間を割き、注意を払って、その努力を認めます。このように、チームの強みを活かして会社にとって最適な方法を見い出そうとするリーダーたちの意欲がチーム内に浸透し、結果として従業員のモチベーションを向上させることができるのです。

  • ハイブリッドチームにおける信頼関係の構築

    オフィス、フロントライン、リモートオフィスと、チームががますます分散するなか、協働型リーダーは信頼関係の構築において重要な役割を果たします。他者が多様な視点を受け入れてくれると知れば、従業員はどこにいても、自分たちの貢献がしっかり評価されると確信することができるのです。パンデミックによりリモートワークやハイブリッドワークが新たな常識となるなか、すべての人が自分たちの居場所を感じられるようにする必要性がかつてないほど高まっています。

  • スタッフの成長を加速

    2020年版Deskless not Voiceless (デスクがなくても、声は届く)レポートでは、上司が自分のキャリアを育ててくれていると感じるフロントラインマネージャーはわずか41%でした。協働型の環境では、さまざまな部署の専門家から学びを得る機会が多く提供されるため、この数字は高くなると考えられます。特に、従業員が自ら意思決定を行うよう奨励され、他の人をリードする自信を身につけられるチームでは、さらなる能力開発が期待されます。

  • 新しいリーダーの育成を支援

    「自然発生的なリーダーシップ」とは、グループでの交流の中で、チームメンバーから自然にリーダーや意思決定者を生み出す戦略のことで、近年急速に浸透しています。社員が効果的なリーダーシップを発揮していると認識した場合、「新生リーダープログラム」を通した的を絞ったトレーニングでそのスキルを育成し、将来、従来型のリーダーの役割に就くための道を開くことができます。

協働型リーダーシップの課題

協働型リーダーシップの課題

協働型リーダーシップの実現は容易ではありません。気をつけるべき落とし穴がいくつもあります。

  1. 熱意の欠如

    協働型プロセスを新たに導入する際には、チームのモチベーションを維持する必要があります。取り組みを進めるにつれ、だんだんやる気を失っていく可能性もあります。原因として、社員がプロジェクトを大局的に見られない、努力が報われていないと感じる、または単に燃え尽き症候群になっている、などが考えられます。明るい雰囲気を保ち、チームの成功を称賛し、管理しやすい仕事量にすることで、長期にわたりチームのやる気を維持できるはずです。

  2. 意思決定の遅延

    考慮すべき意見や満たすべき優先事項が非常に多くなるため、協働型リーダーシップでは意思決定に時間がかかる場合があります。協働型の環境では、可能な限り効率的にグループで意思決定をするために必要なツールを従業員に提供するべきです。リアルタイムでコラボレーションできるコミュニケーションツールを使用することで、この問題を解決できます。

  3. コントロールの喪失

    協働型リーダーがチームにおける部門の壁を取り払い、従来の指揮系統を廃止した場合、水準が低くなってしまう危険性があります。個性がぶつかり合い、締め切りをあっという間に過ぎてしまう可能性があるため、「コントロールを失うことなくコントロールを緩める」という絶妙なバランスを実現する必要があるのです。協働型リーダーは権威主義的なアプローチをとるのではなく、高い水準を維持するために適切なタイミングで他者に影響を与えることを学ぶべきです。

  4. 責任感の欠如

    他の人と仕事を共有すると、自分の仕事に対する責任感が薄れる場合があります。また、あるタスクに対して特定の部署に有利になるような決定が行われた場合、社員はそのタスクから距離を置いてしまうかもしれません。高い責任感を維持するためには、プロセス全体を通じてチームメンバーに強い当事者意識を持たせる方法を見つけるべきです。そのためには、まずグループ内で目標を設定しましょう。目標は、全員の優先事項を反映させるために途中で適宜変更します。

  5. 対立の可能性

    さまざまな人が関わる状況では、必ず意見の相違が生じます。グループは、共通の目標に焦点を当て問題を解決するよう努めるべきです。グループの大局的な目標を念頭に置くことは、困難な会話を仲裁し、クリエイティブ面でのプライドのぶつかり合いを抑えるうえで役立ちます。

協働型リーダーシップを発揮する方法

協働型リーダーシップを発揮する方法

協働型プロセスを導入することは容易ではありませんが、協働型プロセスを成功に導くためにマネージャーが利用できる戦略がいくつかあります。

メンバーに大胆なアイデアを共有してもらうには、チームが彼らを尊重していると信じてもらう必要があります。プロジェクトが始まったら、アイスブレーカーセッションやアクティビティを企画して部署間の壁を取り払い、企業の「端」にいる人たちに意見を出してもらうよう促しましょう。

リーダーがリードすべきです。自ら公正さを奨励し、同様の行動をするよう周囲を促すことで、皆に模範を示しましょう。リーダーが意思決定の透明性を高め、適切な時に弱さを見せることで、チームの人々は、自分がチームに価値をもたらすことができるという自信をもつことができます。

協働型リーダーシップは、多様性を受け入れ、共通の目標を達成するために各チームがさまざまな視点を活用したときに最も効果的に機能します。共通の目的を常に念頭に置くことで、全員の集中力を高め、より影響力のある成果を達成できます。

協働型リーダーシップの定義

協働型リーダーシップの定義

協働型リーダーは通常、次のような資質を兼ね備えています。

好奇心
好奇心

リーダーは、同僚に仕事を任せてどっしり構えておくだけでは不十分です。マネージャー自らが建設的な質問をすることで、周囲に同じ行動を促すことができます。より多くの人が適切な質問をすることは、あらゆる人にメリットがあります。

協働型リーダーはビジネスの細部にまで強い関心を持っています。その的確な質問が、目の前の課題を理解し、新しい解決策やより適切な戦略につながる会話を生み出すきっかけとなることがあります。

偏見を持たない
偏見を持たない

多様性のあるグループを最大限に活用するため、リーダーは他者の意見に耳を傾け、学ぶ姿勢を持つべきです。異なる部署や職位のチームメンバーが共に仕事をすることで、思わぬ事実が見つかることもあるでしょう。優れたリーダーはこのような新しい情報に怯むことなく、多くの場合、新しい情報を取り入れることを選びます。このためには、より多くのメンバーに意見を求め、グループ全体に問題解決に向けた案を求めることが必要となります。

他者を尊重する
他者を尊重する

敬意をもって同僚に接することは、オープンで誠実な職場環境の構築につながります。協働型リーダーにとってこれは、全員の意見に耳を傾ける時間を設けることを意味します。同僚の懸念に対応し、公正な行動をとるリーダーであるという評判は、信頼感の向上にもつながります。そしてこの信頼感があれば、チーム全体が批判を恐れることなく、自信を持って自分の考えを共有できるようになります。

一歩下がるべきときと主導権を握るべきときを知る
一歩下がるべきときと主導権を握るべきときを知る

協働型リーダーは、自分の長所と同様に短所も認識すべきです。そして、適切なタイミングで後方支援に回ることで、チームメンバーが自分のスキルや知識を前面に出せるようにします。

もちろん、すべてをチームメンバーに任せるべきではありません。有能なマネージャーは適切なタイミングで自分の専門知識を提供し、同僚をサポートします。

リーダーは、部署間の連携を保ちながら、常に部下に協力できる状態にあるように努めます。

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