職場への帰属意識をどう定義するか

帰属意識とは、基本的に、「本当の自分」が他者に受け入れられ、認められているという感覚のことです。職場では、従業員が仕事においても人間関係においてもオープンで正直な貢献ができること、そしてその貢献が聞き入れられ、評価されていると感じられることが重要です。また、社員エンゲージメントを高めるうえでも大きな役割を果たします。

しかし帰属意識は、ただの推奨事項ではありません。人が能力を最大限に発揮するために不可欠な要素です。心理学者アブラハム・マズローの欲求の階層を通して見てみましょう。1 欲求の最初の4段階はすべて「欠乏」、つまり何かが足りないということです。これらの欲求が満たされるにつれ、モチベーションは低下していきます。

しかし、この上には「成長欲求」と呼ばれる段階があります。成長欲求は、人として成長し、自己実現のレベルに到達し、「可能な限り最高の自分」になりたいという願望から生じています。帰属意識を成長欲求として理解すると、それが満たされたとき、その人のモチベーションは高まるということになります。

年齢や性別などの属性が異なれば、仕事や職場での経験も異なります。チームの一員であることは、目的意識を与え、労働上や仕事上の関係という規則的なニーズを提供することできます。しかし、仕事にはそれ以上の意味があり、収益性とビジネスの成功をもたらす要因として、心身の健康の問題がますます注目を集めています。

デロイト社によると、帰属意識とは安心、つながり、貢献を感じることです。アイデンティティ、社会とのつながり、受容の問題など、自己実現につながる多くの要素を包含しています。社員が求めているのは、ありのままの自分が評価されていると感じること、そして自分が公平に扱われ、重要性をもち、同僚やリーダーから尊敬されているという自信を持つことです。

強い帰属意識を持つ社員は、他の社員とも有意義な関係を築くことができます。組織の目標に共感し、自分が重要な役割を担っていると感じ、自分の強みが評価されていると感じるのです。

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職場におけるダイバーシティ、インクルージョン、帰属意識

職場におけるダイバーシティ、インクルージョン、帰属意識

企業にとって、DE&I (ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)は優秀で満足度の高い人材を確保するために不可欠なものであり、それに伴う利益も期待できると考えられています。しかし、帰属意識の概念がさらに大きな意味をもつのは、本人たちの意識を通じて人々を動機づける力がある点です。

CBIは、帰属意識をダイバーシティとインクルージョンの「不足要素」と表現しています。また、ダイバーシティを受け入れインクルージョンを促進する職場づくりのために多くの取り組みが行われてきましたが、最終的には帰属意識こそが、職場が真の意味でインクルージョンを尊重し、ダイバーシティを受け入れていることの証明になるとしています。

DE&Iポリシーが組織や社員に多様性を認め他者を公平に扱うよう求めているのに対し、帰属意識の構築とは、一人ひとりが「自分はチームの一員である」と感じたいという欲求を理解することに他なりません。リーダーにとって、このプロセスで重要なのは構造や統計ではなく、異なる視点を求め考えや意見の多様性を奨励することです。

職場への帰属意識について、社員はどのように感じているか

職場への帰属意識について、社員はどのように感じているか

新型コロナウイルス感染症や働き方の大きな変化を受け、リーダーたちは帰属意識とパフォーマンスの間に強い関連性があることを認識し始めています。ハイブリッドワークやリモートワークは、多くの利点をもたらす一方で、孤立や排除の問題に光を当てることになりました。現在、雇用主は、社員が帰属意識を感じられるような努力をする必要性があると認識しており、これは特に、物理的なスペースを常に共有するわけではないハイブリッドな職場において重要となっています。

LinkedInの最近の調査では、ダイバーシティとインクルージョンには価値があるものの、心理的な安全と社員のエンゲージメントを保証する戦略に帰属意識が含まれていない場合、ダイバーシティとインクルージョンだけではパフォーマンスを最大化できないということが示されました。2調査では、帰属意識を感じるためには何が必要かという質問への回答を求めました。その結果、最も多い59%の人が「自分の功績を認めてもらいたい」と回答しています。また、51%の人が「自由に意見を述べる機会が欲しい」と回答しています。

半数が「会議での自分の貢献が評価されていると感じたい」、半数が「職場で自分らしくいられるようになりたい」と回答しています。また40%超が、会社に能力開発についての透明性を求め、チームや会社から個人として評価されていると感じたいと回答しています。

ダイバーシティとインクルージョンの確保は、こうした目標達成のために必要なことです。しかし、帰属意識がもたらすパフォーマンスやエンゲージメントのメリットを享受したいのであれば、組織が社員の心理的反応を深く検討する必要があることは明らかです。

しかし、それは必ずしも容易なことではありません。デロイト社の調査によると、79%の組織が、職場に帰属意識を醸成することが次年度の事業の成功にとって重要だと考えていると回答していますが、行動に移す準備ができているのはわずか13%という「準備のギャップ」が確認されています。

職場における帰属意識の価値

職場における帰属意識の価値

コーチングを専門とするBetterUpが米国の正社員1,789人を調査し、3,000人超の参加者を対象に実験を行ったところ、高い帰属意識は仕事のパフォーマンスを56%も向上させることが判明しました。3それだけではなく、離職リスクを50%、病欠を75%削減することができました。また社員にとっては、昇給が2倍、昇進も20%近く増えるという結果となりました。ポジティブな意見としては、「他の人に自分の会社を勧めたい」と答えた人が167%も増えました。

逆に、排除されている、孤立していると感じることは、大きなマイナスの影響を与える可能性があります。また、この調査では、排除が自己妨害につながり、チームやビジネスプロジェクトに悪影響を及ぼし、経済的損失をもたらすという明確な証拠も得られました。排除された人々は仕事への意欲が比較的低く、たとえ報酬が減ってしまうとしても、その傾向は変わりませんでした。排除されたと感じることで、人は努力をしなくなるのです。

この調査結果は、新経済学財団4が、ビジネスコストという観点から英国全体の孤独と孤立の影響を調査した報告書と一致します。この調査で検討された要素は以下のとおりです。

  • 病欠につながるさまざまな健康問題(孤独が直接的または間接的な原因と考えられるもの)。

  • 生産性と心身の健康のつながり、および、排除感や孤独感が社員のモチベーションや生産性の低下に及ぼす影響。

  • 社員が不満を抱えている、または過小評価されていると感じている場合に離職率が高くなる理由。

この調査によれば、上記の要素が英国企業にもたらす損害は合わせて年間25億ポンドに上り、心身の健康、帰属意識、そしてビジネスの成功の間に明確な関連性があることが示されています。

リーダーはどのようにして職場での帰属意識を高められるか

リーダーはどのようにして職場での帰属意識を高められるか

成功する企業の人事・経営戦略において、帰属意識の問題が重要な位置を占める必要があることは明らかです。帰属意識を高める文化を築くとともに、誰もが自分自身の存在を認められ、貢献できると感じられるような職場づくりを実現するために、リーダーは数多くの取り組みを行うことができます。

全員を巻き込む

帰属意識が全ての人に関わる問題であることを明確にし、全員が貢献するよう働きかけましょう。ポリシーや意思決定をオープンで透明性のあるものにします。また、帰属意識を高めるための新しく革新的な方法について調査します。

排除行動に介入する

望ましい行動の模範を示しましょう。良い経験も悪い経験も含めてオープンに話をし、進捗状況に関するフィードバックを求めます。

「部外者」が出ないようにする

帰属意識の高い文化を心から支持していることを伝え、すべての意見に耳を傾けます。

違いを認める

従業員の経歴やパフォーマンスにおけるユニークな特徴を褒めるようにしましょう。

声を上げることを奨励する

批判や否定的な結果を恐れることなく、自分の気持ちを表現できる環境を作ります。

少数派の人々に焦点をあてる

そして、それぞれの違いが率直に評価され、重要視されるようにします。

適切な福利厚生を提供する

フレキシブルな勤務体制、心の健康プログラム、個人への表彰制度など、一人ひとりに合わせた福利厚生を提供します。

メンターシップを推進する

メンターシップを利用して、多様な社員同士が仕事上のつながりを築き、異なる視点を取り入れることを奨励します。

チームの絆を深める

仕事以外の場面でバーチャルや対面での交流を奨励することで、人間関係の構築と強化を図ります。

全員に意見を求める

参加に消極的な人や発言が少ない人に常に気を配りましょう。

意思決定を透明化する

誰が何を根拠に意思決定しているのかを明確にします。全員が、決定事項や決定者に関する情報にアクセスできるようにしましょう。

共感力を高める

誰もが当たり前のように相手の気持ちや心身の健康を考えることができる文化を生みだしましょう。そのためには、外部の専門家を招き、メンタルヘルスや孤独感などの問題についてスタッフと話をすることも必要です。さまざまな視点を共有するための取り組みを奨励しましょう。

将来の計画に多様性を組み込む

一人ひとりの違いや新しい影響、スキル、経験、貢献を考慮した計画を立てます。

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1 『自己実現理論』、McLeod、2022
2 『社員が語る職場への帰属意識をもたらすもの』LinkedIn記事
3『職場への帰属意識の価値: 包括的な職場作りへの投資』、Kellerman
4『英国の雇用主が負担する孤独の代償』、Michaelson、Jeffrey、Abdallah、2017
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