ESGの意味とその重要性

投資家は随分前から、投資先を決定する際、環境、社会、ガバナンスの問題を考慮していました。今やESGは、従業員、顧客、企業文化にとっても、重要性が増していると考えられるようになりました。

カルチャー | 所要時間: 6分

ESG(環境、社会、ガバナンス)が注目されるようになったのは、成功した企業で1960年代以降、自社戦略に取り入れる会社が増えていったためです。投資家は、投資先企業の活動に注意を払うようになり、その活動が望ましくない、あるいは無責任だと思えば、その企業から手を引くようになりました。

2010年代以降、世界的なパンデミックによって世情が悪化すると、投資家たちの影響力が急激に拡大します。投資家は投資先を決定する際、二酸化炭素排出量、ダイバーシティとインクルージョン、グローバルなサステナビリティのガイドラインへの準拠といった分野のESGデータを考慮するようになりました。打たれ強く、責任ある行動を取ることを約束している企業が、良い投資先と見なされることが増えてきました。

しかし、そう考えるのは投資家だけではありません。従業員もESGを自分たちの課題として、より重視するようになりました。パンデミックにより世界の情勢が一変してハイブリッドワークが増加したことで、働くことの目的を改めて見直す人が増えました。この動きがESGの問題と密接に関連しています。Robert Halfの調査によると、5人に2人近くの割合の従業員が、雇用主がESG課題に十分取り組んでいない場合、新しい仕事を探すと回答しています。また、ESGは若年層にとって特に重要であり、18~34歳の22%が給与よりも企業の価値観を優先しています。

Workplaceで業務を簡素化

オフィス勤務再開の周知からハイブリッドワークの導入まで、Workplaceは業務を簡素化します。

ESGとは

ESGとは

ESGは、以下の3つの要素の総称です。

環境

組織が及ぼす環境への影響として、二酸化炭素排出量の削減に関する方針が挙げられますが、その効果は通常、国連のパリ協定に照らして測定されます。この協定は、合意に署名した国々が2050年までにカーボンニュートラルを目指した取り組みを進めることを約束するものです。ビジネスリーダーは、このコミットメントに沿って、組織の環境への影響を減らすという大きな責任を負っています。

なおこれ以外の環境問題としては、エネルギーと水の利用、リサイクルと廃棄物の管理、プラスチックの排除、製造業により発生する有害物質の影響の低減、環境保全や生物多様性の問題への配慮などがあります。

ソーシャルポリシー

投資家や顧客にとって、組織が従業員、社会、そしてより広いコミュニティとどのような関係を築き維持していくのかがますます重要になっています。また、現在および将来の従業員にとっても、そのことは最優先事項になりつつあります。

しかし、リモートワークとハイブリッドワークが普及したことから、この課題の本質が変化しました。今やビジネスは、従業員の福利厚生、ダイバーシティとインクルージョンなど事業の社会的影響について、物理的なワークスペースの内外両方を視野に入れて管理しなければならなくなりました。ESGの観点からすると、ハイブリッドワークには数多くの利点があります。たとえば通勤による環境汚染は低減されますし、雇用の障壁も多少は解消されます。一方で、リーダーはマイナス面にも目を向ける必要があります。その例としては、地域社会の人々との交流の機会が減ることや従業員同士の人間関係が築きにくいことが挙げられます。

ガバナンス

公正な雇用の実践は、優れたコーポレートガバナンスを維持する、またはそれを目指す改善策の一助となります。また、サプライチェーンに注意を払い、確固たる倫理的価値観を持つサプライヤーやパートナー企業を優先することも重要です。

職場でESGに注目すべき9つの理由

職場でESGに注目すべき9つの理由

職場の将来像としてESGを前面に押し出すと、以下の重要な分野でメリットが期待できます。

1. 積極的な勤務態度の従業員が増える

ESGスコアが高い企業は、従業員の満足度が高いとの報告があります。Marsh & McLennan Advantageの調査によると、従業員の満足度が高い企業はESGパフォーマンスにおいて14%高いスコアを獲得しています。そうした雇用主はダイバーシティに配慮し、二酸化炭素排出量が少ない傾向があります。また、感情的知性が高く、従業員の感情を理解するための努力を惜しまない傾向があります。

2. 収益性が向上する

London School of Economicsによると、従業員満足度の高い企業は、そのスコアが低い企業に比べて、収益率が2~4%高くなっています。また、Stern Center for Sustainable Businessが1,000社の事例を比較したところ、その58%で、ESGに対する積極度と財務実績との間に正の相関関係が見られました。

3. 評価が向上する

環境・社会問題に関するメディアの注目度が高まり、オンラインでの活動が広まる中、ESG関連の認証を示せない企業は、ネガティブな宣伝や評判の低下に直面する可能性があります。ただし、そうした認証や認定が本物であることが重要です。せっかくESG関連のポリシーを策定し実践している企業でも、それが見せかけだけで誤解を招きやすい「グリーンウォッシング」 と見なされると、遠くない将来にパブリックイメージが損なわれるでしょう。

4. 法規制の順守

職場でのESG実践に法的根拠を与える、法規制の圧力が強くなってきています。たとえば、平等、人権、贈収賄防止に関する規制があります。コンプライアンスに積極的に取り組むことで、規制当局からの介入、ポリシーの修正、当局からの監視、高額な裁判手続きなどが防止でき、結果としてコスト削減につながる可能性があります。

5. 顧客へのアピールが強化できる

顧客が購入元のビジネスに対して、優れたESGの実践を求める傾向が強まっているので、ESGを提供していないビジネスは顧客にとって魅力が乏しいと見られる可能性があります。ある顧客調査では、購入を検討する際に、スタッフへの報酬を公平に支払い、環境に配慮し、コミュニティに貢献することがより重要であると答えた人が62%にも上っています。また52%の人が、倫理を重視するサプライヤーやサプライチェーンを使用している小売業者で買う可能性が高いと答えました。

6. 投資家にもアピールできる

McKinseyによるグローバル調査によると、ESGプログラムは今後、株主価値に対してより大きく貢献するようになると考えるビジネスリーダーや投資プロフェッショナルが83%を占めています。ESG戦略が貧弱な企業は、レジリエンス(回復力)が低く、財務リスクが大きいという見方が投資家の間で広まりつつあります。

7. 有能な人材を引きつけられる

ニューヨークタイムズの調査によると、MBAの学生の大多数は、環境に配慮した企業で働けるのなら低い給与も受け入れると回答しています。Robert Halfによると、調査対象者の53%は非倫理的と感じた会社では働かないと回答しています。また、雇用主が取引を行う企業も多様性に富み持続可能で透明性が高いことが重要または不可欠であると考えるオフィスワーカーは95%に上ります。

2029年までに、Z世代とミレニアル世代は世界の労働力の72%を占めるとされます。こうした将来の従業員は、雇用主が環境への影響に基づいて行動し、社会問題に対処し、倫理的行動へのコミットメントを示すことを期待しており、もっと上の世代よりも環境問題や社会問題を重視します。

貴重な戦力である若手従業員へのアピールという点で、若手の専門職従事者や学生が最も魅力的だと考えている企業のESGスコアは、平均より25%も高いことがわかっています。

8. 優秀な従業員の離職を防げる

強力なESGポリシーを運用していると、優秀な人材から見て自社の魅力が高まるだけでなく、既存の優秀な従業員が離職を思いとどまる可能性も高まります。つまり、大量離職の潮流を止める可能性があります。従業員の満足度をESGと結び付ける人が増えているので、従業員の満足度は生産性の向上と在職期間の長期化につながります。

9. 目的意識を示せる

パンデミックにより、もっと大きな意義のある仕事に就きたいと考える人が増えました。効果的なESG戦略は、より高い目標を掲げ期待を抱いている人材の採用に役立ちます。ただしそうした従業員は、勤務先の会社と自身の個人的な価値観が重なっているという実感を求め続けます。したがって、組織は給与や福利厚生のパッケージを提供するだけでなく、ウェルビーイングも重視しなければならなくなるかもしれません。

ESG戦略を改善し実施するには

ESG戦略を改善し実施するには

ESGの道のりのどの段階にある組織であっても、その戦略を実行する、または改善するために、できることが以下に挙げる通りいくつかあります。

  • 明確な目的や目標を設定する

  • 現在の実施状況を評価し、個々の要素について、どこまで達成するのか、または改善するのかを従業員を巻き込んで検討する

  • サプライチェーンパートナーのESGの評価も忘れずに行う

  • 改善とモニタリングのフレームワークを開発する

  • 進捗状況を定期的に確認・報告し、あらゆるレベルの従業員および関係者とコミュニケーションを図る

  • 戦略を社内外で明確に伝える

  • グリーンウォッシングにならないように注意する - ポリシーや約束は現実的で達成可能なものであることが重要

  • すべての従業員に個人として、またチームとして何らかのイニシアチブに参加してもらい、チームワークの精神を育む

  • 社会的および環境的責任に関するメンタリングやトレーニングプログラムを実施する

  • 新入社員や既存の社員に意見を求める。Z世代やミレニアル世代が多数意思決定に参加すると、斬新な洞察やアイデアが得られるでしょう

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